陽がすっかり落ちたころ、工場と寝子電の騒音に混じって自家発電機の駆動する音が聞こえる。
穴と言う穴をキャンバスやベニヤ板でふさがれた第3倉庫――夜な夜な殴り合いの試合や、会合のようなものが開かれているという噂のここが、音の発信源のようだ。
自家発電機の電力で中は照明があるが、薄暗い。
そんなところで、今日も今日とて誰かしらがここに集まりにくる。
だろうな。それで正しい、……っ!
(正面からタックルをモロに食らう。意外なほどにあっさりと重心が地面から離れ)
だが。それで勝てんのはスポーツ空手相手まで、だ。
(地面との衝突までの僅かな滞空時間。
その間に、わざと脱力していた四肢を日暮に絡ませてクルリと身体を捻らんとする。
いかな奇術か、楓の企みが成功したならば両者の上下は入れ替わり、
尚且つ日暮の肘が極まった状態で落下するだろう。そのままでは確実に、折れる)