遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
霧生さんは、8組か。芸術家か……それでピアノを?
そう。ありがとう……思い詰めてるかもしれないけれど、僕は大丈夫だよ……何も決定的な行動をする勇気もない臆病者でもあるから、こんなところで寂しそうなふりをしてるだけ……
だから気にしないでほしい……というのは無理か
ああ……僕もピアノを引くよ。聖歌やクラッシクを。自分で作曲はしない。創造する才能が無くてね
君の演奏を聞いてみたいな。君は自分で曲を作ったりする?
この島では不思議な事が多いですね……
そうですか。異常な状態を体験すれば、自然と親近感が沸くものです。粘土細工ですか……そうですね、見てみたいですね……呉井さんがどんなものを作り出すのか、その心の内に僕は興味があります
作るうちに手先が器用に、ですか……それは羨ましいですね。呉井さんは何かも作ったり、直したりするのが、単純にお好きなんでしょうね……それが羨ましいです。僕は何か情熱を打ち込めるものがないから
僕はピアノと話は出来ないし、何かも模倣するのは得意なのだけれどね
何かを好きでい続けられるのは、才能なのかもしれない
僕にそれができないから、なにも生み出せないし、治せない、のかも……
……兄弟だからって、何も仲良くしなければならないという法則もないのだから、別に気にする事じゃない
ただのしがらみにしかならないのであれば、そんなものは……
すみません、僕が意見するような事ではないですね
全てを捧げる覚悟があるもの……ですか。それならばほんの限られたものしか資格は無いでしょうね。この僕にも、斑鳩さんにもそれがないという事なのでしょう
斑鳩さんは、ご自身のためにピアノを弾いているわけではなさそうです。……貴方の言葉に影響を与え、死してなお貴方を縛っているその友人……
……
いえ……忘れてください……
……信じられるものがあるのなら、まだ……