遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
駆け引きと技巧ですか……ゲームですね。マンツーマンでならチェスや将棋がありますよ?
僕も昔はそうした遊びをしていたけれど、今は、もっと違う……
僕は他人が内側に秘し隠している何かに興味を持つ。本人すら気づいていないかもしれない……大概それは僕の傷を刺激する。僕と彼とで自慰と自虐をさせている。僕はそれを眺めて満足する。
根底は……似ているのだと、思います。
本人は暇だし落ち着きがないとか言いますが、実際は違う。兄さんの対象は世界ですから。気味の悪い言い方をすると、世界中の人間と仲良くなりたいんです。兄は誰も憎めない。家畜のように扱った人間でさえ。あらゆる悪意を自分にぶつけようとして、それすら出来ないので憎むべき本来の自分を無視したんです。きっとそれが兄さんの歪み。自分を無視した人間が一人でいる事は存在の消滅を意味する。だから人と関わる。兄さんは他人の認識の中にしか存在していない。それをなぞって存在を証明し続けるのです。
僕は偏食家です。嫌いなものを口に入れるぐらいなら飢死を選びますよ。
質問はそのままの意味ですよ。何かの暗喩でもなく。言われてみれば不合理や騒音は嫌いそうですね……子供は克服出来たのですか?……どうして?
気を付けます……。僕も、普段ならもっと愛想もいいし淑やかですよ。苛辣で傲慢なのは僕の本性です
斑鳩さんと同じ反応の方が難しいですよ
僕は自意識過剰ですから。人嫌いの自分嫌いの分析好きです
僕も斑鳩さんとの対話は充実感があります。僕の発言は哲学すぎて難しいだとか理解できないと言われるので……
共犯者……ですか、いい響きです。斑鳩さんらしい関係だ。彼女も時任彼方の死の原因を……?
僕は首輪の片割れか……成程。そうか、そうですね。
僕はさしずめ自分を殺そうとしていたのかな……
僕が自分を許せば、きっと彼も開放される……
そうですよね、斑鳩さん。
……本当の意味で、殺す必要があるんです
僕も、兄も、貴方も、死ななくてはならない
一度死んだ人間でさえも――