遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
やっぱり時任さんの方からですか
最初は気紛れだったのかも知れませんね。想像ですが、皆が時任彼方に吸い寄せられる中で、貴方だけは本に興味を示していた……だとしたら、時任彼方にとっては面白くなかったのかも。それで本を取り上げた……
むう、そうですか……(参ったなと云う顔)
では失礼を承知で発言します。
貴方は彼に囚われていた。そう思ったんですが、何か違う……もっと別の言葉……閃いたのが『免罪符』
『時任彼方に薄情だと言われたのだから、自分は薄情でも仕方がない。あの言葉は呪いのように自分を縛る。責められる理由はない。もう時任彼方に責められているのだから』
……詮索好きの曲解です。聞き流してください
(「自重したまえ」と言われてしょんぼりと項垂れ)
……愚かだと……思います。とても困らせてしまった。僕には大切に想ってくれる人や、見守ってくれる人たちがたくさん居るのに……僕はそれが時々嫌なんです。満たされる度、同じだけ虚しくなる……
僕をざわつかせないで欲しい……そう、思うのだけれど……捨てきれません
生きる理由は僕にもあります。僕を慕ってくれる人の為幸せを演じる。そこまで皮肉めいた言い方をしなくても、望まれているうちは、死ぬ気にもなれません。
では似たようなものを新しく買って返しますよ……
体液が嫌だなんて……それを交際相手の前でも言ってみてくださいよ……
知ってしまえば貴方が生存する理由がなくなる、無意識の防衛本能かも知れません。
(穏やかに目を閉じ息を吐くように)……彼の事はよく知らないけれど……命より大切なものはあります……
少し、ですか……その彼女に対してもそう思います?
貴方にも制御できない“衝動”がある。自分で驚きませんでした?……僕は驚きです。時任彼方を喪った後なのに。
もし実行に移すなら、お気を付けて
失望するのかされるのか……それとも二人で堕ちるのか……
僕が兄さんを……見守る……?
でもどうしたらいいんだろう……
……努力、ですか。……僕はただ理想を押し付けていただけ……
兄さんの歪みの原因は殆ど僕で、僅かに両親。僕たちの安寧と罪の肩代りと気慰みのために飼育された生贄。それも個性なら、受け入れるしかない、か
この世界は狂人の集まり……理解するなど到底無理……そう思った方が楽なのかもしれません
秘密があった方が魅力的……ですか?はは、そうですね、斑鳩さんがすべて解明されてしまったら、僕も興味を失いそうだ