遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
大の大人を子どもに、悟った少年を少女にする、それが恋だよ
お兄さんは君の歪みを許し受け入れてる。なら君もそうするんだ、そうする努力をしろ
君がかつて憎み嫌悪したお兄さんの歪み……無理矢理に矯正するんじゃなく、それも彼の個性、一つの人格だと認めたらどうだ。
歪んでいようが壊れていようが、それが生き抜くために得た鎧なら貶める資格はない。
皆とわかりあうなんて幻想だ。親しい間柄でも秘密はある、全てを明かす義務も暴く権利もないと俺は思う
月並みだが秘密があったほうが人は魅力的じゃないか
鏡に映った自分を眺めて愉しむか……ナルシストだね。その外見なら無理もないか
俺が没頭するのは駆け引きと技巧だ。でもその間も常に頭の片隅で計算しているから……没頭とは違うのか
へえ。君とは正反対、のように見えて根底は似ているのかな、お兄さんは
どこにでもいるのか……随分とアクティブだね。暇なのかい?それとも落ち着きがないだけか
君は偏食家だろうな。美意識が高く好みがうるさい
俺の嫌いなものか……あまり考えた事はないが。大抵は可も不可もなく、好きでも嫌いでもない。
でも騒々しい音や不合理な人間は嫌いだな。あとは……少し前まで子供が苦手だった
油っこい料理も好きじゃない。……質問の意図がずれてるかな?
君の分析は的確だ。人間観察が趣味というだけあって洞察力が鋭い。あるいは俺以上に俺のことを見抜いている、それが気に障る人間もいるだろうね。
人の弱みやトラウマを指摘する時は特に言葉を選んだ方がいい
君は鏡が好きみたいだな。でも俺は君と話してる方が楽しいよ。似ていても違う反応をする、鸚鵡返しは芸がない
彼女は……共犯者だ。
上手く説明できない……同じ謎を追う間柄、とでもいえばいいか
そんな顔、か。俺自身意外だよ
そうだな。君が自分自身を許せた時、初めてお兄さんは解放される。献身と束縛はよく似ているから……
俺には君たちの首に同じ輪が嵌まっているように見える。運命共同体呪いだ
君は飼い主じゃない、主人でもない、同じ首輪に繋がれた片割れさ。
お兄さんを縛る呪いは君の首も絞め続けている