遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
そう、ですね……どうしてだろう、僕はあの人といるとただの子供で。少女みたいで、気恥ずかしいです。兄さんの歪みを許すだなんて……考えた事もなかったから……僕が許される事……僕の醜さを知ったうえで僕を好きでいて欲しい……そんな独りよがりの望みしかなくて……
ああ、でも、兄さんもずっと僕に秘密にしてた……
(おぞましい回想に、憎悪と嫌悪で吐きそうな顔。下がった拳を爪が深く刺さらんばかりに握りしめ)
兄さんは僕に言えていない事、まだあるんだろうか……?
遊ぶの好きな方ですか。僕だって、からかいはします。誰かと恋人ごっこをするかもしれない。でも没頭するなら、好きな人じゃないと出来ないな。僕が他人とそうするのは……鏡に映った自分を眺めているようなもの……ですからね
僕の兄に会いたいですか……?笑顔で人懐っこくて、無神経なふりをして人を気遣う不器用な人間ですよ……僕と斑鳩さんが似ているのなら、兄さんと話すのは神経に障るかもしれません。僕はそれだけではなかったけれど。
兄さんは行動範囲が広いから、寝子島になら何処にでも遍在しますよ。なんて。
斑鳩さんの苦手なものって、興味がありますね。好きはないけど嫌いはあるのですか?
僕、苦手なものの方が多いですよ?自分でも辟易します。
……僕は斑鳩さんのように、これと云った感情も持たず人と接する事ができないのです。僕の趣味は人間観察で、その分析には多少の自信はあります。けれどそれ故に深入りすると相手に共鳴してしまうから……
有意義な対話ですか。鏡との対話は退屈ですか。僕は鏡を見るのに鏡を使うから……どうかな。
先ほどの女性、ですか……?泣かせたいほどの?
そのひとは、貴方の、何ですか……?恋人……?そんな簡単なものではないですか?
ごめんなさい、、、珍しいというか……僕にそんな顔は見せないだろうと思っていたから
おかしくなって?……今までのからかいや社交辞令の時の笑顔とは違って見えたので……
僕も人に言えた事ではないのですが……
僕は自分が傷ついていると認める事は、兄さんを踏みにじる事だと思ってました
でも僕自分を縛り続けていると、永遠に兄さんは僕のために生きなくてはならなくて
僕はどこかでそれを望んでいたのかも……
僕が楽になる事は兄さんを楽にする事なのかなって思ったら、少しは……