遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
狂ってる……
(吐き出す声から感情が抜けていく。虚ろな瞳、過呼吸気味に上下する肩)
僕は……自分が、特別だと思わないと不安だった……でも、どこかで、普通の家庭というものに憧れて、いたのかな……
(静かに首を振って、目を伏せる)
違う……壊し……たのは、僕
僕は……僕たちは、愚かだった。この世界に、信じられるものは、兄さんだけだった
兄さんだけはきれいなままでいてほしかった
でも違った。
歪んでいる人間など、いない。ああ、どうしてこんな簡単な事に気付かなかったんだろう……
その歪みを……許し合う……
簡単には、できない、と思います……けれど、今まで僕がしてきた事より、挑戦する価値がある
貴方が傷つくなら僕も自分を傷付ける。そう言っただけですよ。
大事に、します……言われなくても。僕にはそれしかないのだから
(斑鳩さんの冷たい態度にやっぱりかと少し恥ずかしそうに笑って)
はは、やっぱり。斑鳩さんには通じないかと思ってました
えっと、ですね、例えば斑鳩さんが淡白な性質の人間であると予告しておく、なんていうのはどうでしょう?
斑鳩さんは無性愛者かも知れませんよ?人口の1%しかいないそうですが。エイセクシャルには性的魅力の対象と恋愛感情の対象で表現が様々で、どちらにも興味を示さない人もいます
……ああ、いえ、僕の兄さんが多分そうなのかなって思って、少し調べました。あまり気にしないでください
ただそういう人間もいるから……斑鳩さんは斑鳩さん、まさにそうなのです
いえ、僕が人に触れられるのがこわいから……。もう、お気づきでしょうけど。
(気恥ずかしさを押し殺した顔は少し赤らんでいた)
割り切ってなら……ですか
(考えて)……僕とは少し違うなあ
むぅう……振り回されろだなんて……。
斑鳩さんはこんな気持ちになった事がないからそんなふうに言えるんですよ(口を尖らし)
斑鳩さんには、今は少し違う態度になってしまうような人っていなんですか?
(謝る準備をしていた所の斑鳩さんの微笑みに、子供っぽく驚いて、照れ気味に慌て)
あ、いえ、そんな
ええっと
少しでも、ご自分を赦せたら
きっと、ご友人のことも、素直に見つめられると思うんですっ
あの、僕もそうだから
だから、斑鳩さんも、、、
もう少しだけ、楽に生きて……いいと思います……