遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
敬虔なカトリックである彼が自殺するのは余程の事だったのか、既に信仰など失っていたのか
そんな資格……では、貴方に無いと云うのなら、一体誰にあるのです?
貴方以上に、彼の事を理解した人間などいなかったのでしょう?
でしたら……
(「やめておく」そう首を振る斑鳩さんの態度に、安堵したのか、見透かされ怯えているのか、どちらともとれぬ表情で差し出した手を自ら握り)
ええ、そうしますよ。僕だって、からかった、だけですから……
(咳払いする斑鳩さんをきょとんと見つめ)
そんなに駄目です?
忘れろと云うなら忘れますが、もっと忘れならないような記憶で上書きしてもらえると有難いですけどね
僕も両親と、同じような事をしてしまった、それだけです。あんなに嫌っていたのに……
魅力的、なのかな……僕はあの人はもっと自分の価値に気付くべきだと思うけれど、でもあの人のいいところは僕だけのものにしたい
や、悪いとこだってぜんぶ……
初恋……そう言われたら何か、子供っぽくて嫌だなあ。僕が一方的に懐いてあの人を振り回してるのかなあ……
そうですか。斑鳩さん、女性に人気ありそうですものね。
相手だって、どうだったか分かりませんよ。斑鳩さんの容姿や肩書に惹かれただけなのかもしれませんし
(「面白がってる」と言われ、えーーという顔をして)
そんなぁ。
……ひどい人。
何ですか、自分には想像できない感情だから興味があるんですか?僕の方が驚きですよ。まさか兄さん以外のひとをそんなに好きになるだなんて、なってしまうだなんて……
僕はあのひとが手に入らないなら何も要らないし、毎日あの人の事ばかり考えて過ごしていますよ。
独占欲と依存心の塊りの僕が、僕が接する事であの人が自分を大事にしてくれるのなら、僕はそれだけでいいと思えるんです。
あの人は動作も感情の動きもゆるやかだから、僕と同じペースで僕を愛せないんです。だから僕は待っても良い。あの人が僕と同じ望みを望むまでは、僕はあの人に何も求めません
それだけですよ……