遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
(斑鳩さんの意見に「ええ」と同意し、誰にともなく一言漏らす)
それが餌ならば……
英雄色を好む、ですか。インスピレーションねえ……僕には理解できないが……
もとより天才の思考など理解できないけれど、それにしたって……
熱を交換しあうだなんて気味が悪い。しかも女性とだなんてぞっとしない
(黙り込む斑鳩さんを無表情で観察し、不愉快そうな態度にからかうような微笑で返し)
それは失礼
同情はするが何もしない、分かっていて傍観するなら同罪です
憐憫の情は罪悪感のすり替え
僕個人の体験に基づく見解なので、ご気分を害されたならすみません
そうですね、貴方だけの特権は彼の横暴さでは無い……ですね
(「君にも覚えがあるのか」と愛玩動物の話が出ると眉をしかめ、忌々しそうにゆるりと口を開いた)
……ええ。
僕も犬を飼っていましたから……
だけれども、彼と僕が同じだとは限らない
僕は犬を散々いたぶって、振り回して、欲しいときだけ構って飽きたら捨てた
時任彼方は貴方を捨てたのか
それを実行に移す前に彼は自らの手で自分を消した
貴方は物なんかじゃない
物は笑わない、泣かない、怒らない、何も感じない
僕には分かる
時任彼方が何をしたかったのか
(腹の底から怒りとも悲しみとも言えぬ感情を絞り出すように声を震わせ)
(斑鳩さんに眺められ真っ赤な顔で悔しそうに睨み付け)
か、からかわないでくださいよ……
え、別に、ある場所で出会ったんですよ。ええと、、、僕が怪我してて、偶然通りかかった彼に治してもらったんです。それだけです
……はっ
そうです、理由は僕の過去に起因するものです。以前は軽蔑すらしていました。その時の方がましだったかもしれない。僕の方に恋愛感情は無かったけれど、交際もしていた。僕は女性という存在に復讐したかったのでしょうね
今は女性を人として見られるようになったけれど……今度はこわくなった。
避ければいい、ですか。僕には友人とは呼べないまでも、親しくしている女性もいるんです。恐怖しているのは申し訳ない気がして……
(目を泳がせて、困った顔で)
苦手なタイプ……(自分の服のをぎゅっと握って)
……母のような女性です。女性の嫌な面を色濃く持った……
ヒステリックで虚栄心の塊り、陰湿で嫉妬深く自分勝手な愛情を注ぐ、悲劇を気取る下品な女
……あの身体も嫌いだ、気持ち悪い
(血の気が引いた顔で自分の腕をさする)
……ご、ごめんなさい……
上手く答えられなくて……