本来のだんぼーるはうすに、いかにも突貫工事的な、やはりダンボールの扉がついている。
扉を開ければ、外ともつながっている、本館に比べたら若干こじんまりとした空間が広がっていた。
中には、テーブルと、同じながらもこちらの方が繊細な銀細工のワイヤー細工で組まれた籠に、今度はピンクの星の形をした飴玉が山積みになって入っている。
『防水ダンボール』なるものを入手した為に、実験的に改築工事を行ってみたらしい。
いかに防水といえど、劣化すれば建て替えを行うのだが、作った本人は満足感にあふれて、その事をすっかり失念しているもようである……
実際の部屋としては、若干のこじんまりさではあるが、人が二人とテーブルが一つある分には全く問題なさそうだ。
皆、やっているかも知れないね、でも。
…自分が人でなしなのは何よりもよく知っているから。
だから、感情以外で言葉を選ぶのは無しにしたいと思っているんだよ。
少なくとも今は、言葉を選ぶのは感情だけでいい。
……(相手の自嘲に沈黙で否定して)……情けなかったら、灯くんはここには来なかった。違うかな?
私としては、灯くんは充分に格好良く見えるけれども…どうなんだろうね。(不思議そうに小首を傾げてアイスをパクリ)
テオとののこさんはろっこんをばら撒く前のこの世界の神様だった。私は、元の世界なんか大嫌いだった。
それもあって…最初は、クローネの目論んでいる世界も悪くないかなって思っちゃったのは認めるところだよ。
でも、クローネが見せた『皆が好き勝手に出来る世界』そんなものの先に何が残るんだろうと思ってしまった瞬間に、泡沫のように消えちゃった。
……確かに、テオの持ち込む厄介事は大変なものばかりだよ。
──皆を危険に晒すような。
なのに、テオは空間を切り分けるだけで何にもしない。
それどころか、そこに駒のように皆を叩き込むんだよ。もれいびは、もともとののこさんの能力だからって。ふつうの「ひと」だって巻き込んで。
『説明すらないの? 皆を危ない目に遭わせておいて。
皆も不思議に思わないの? 死んじゃうかもしれないのに』
テオが皆に話していなさそうな事情を全て話せば、もっと早くにこんな現象、片がつくかもしれない。
……頭の中で形になったら、実行するのに時間は掛からなかった。
前に皆が遊園地に放り込まれる時があったんだ。
そこで、テオが言ったの。「この世界は自分のだ」って。……その為に、戦う皆の事は、考えてもいないんだなって。
(僅かにうつむく映していない視線の先にスプーンでぐしゃぐしゃになったアイス)
それは、充分に──望んで踏まれている人はいい。でも、そうでない誰かを踏みにじっているんじゃないかって思っちゃったんだよ。
(アイスに斜めにスプーンを差して)