寝子島イリュージョンランド入口付近にある管理人室
鍵は開いており誰でも自由に出入りできる
埃っぽい室内にはステンレスの机とスプリングの壊れたボロいソファー、衝立と戸棚があり、窓から見えるカラフルな観覧車が往時の賑わいを偲ばせる……
管理人室(雑談所)です
正門から入るなら必ずこの横を通り過ぎなければなりません
スルー可。
こういう場所っていうと
不良の溜まり場になってそうなものなんだが
意外とそうでもないんだな。
(かけられた声にくるりと振り返り
視線を合わせ、緩やかに笑って
こんにちは。
散歩をしていたら居心地が良さそうな場所を
みつけたものだから立ち寄ってみたのよ。
迷子…。
まあ、迷子といえなくもないかしら。
私の唄を気に入って頂けた様で光栄だわ。
ただ頭に浮かんだ言葉を
好きな様に唄っているだけなのだけれどね。
廃墟で生活している人間を知っているけど
ここにはそういう人間はいないみたいね。
それとも、貴方がこれからここに住むの?
(振り返り冴来さんに気付き、眼鏡の奥の目を胡乱げに細める)
おや……天使の鼻歌が聴こえると思ったら。迷子かい、お嬢さん。こんな山奥で奇遇だね
その唄は即興かな?なかなかこの場に似つかわしくて雰囲気がでてるじゃないか
片付けを手伝ってくれるのかい?
……そういう訳でもないか。まあ、俺のテリトリーじゃないからね。好きにするといい
コーヒーメーカーが現役なら一杯ご馳走したいところだが……
本当に何もないな、ここは。
廃墟だから当たり前か(軽く肩を竦める)
冷たく寂しい遊園地…♪
好かれ愛され慈しまれて…♪
今ではそれも過去のこと…♪
私もいつかそうなるのかな…?♪
(さみしげに小さく歌いながら入室し
辺りを見渡した後、小さく地面を蹴る真似をする
荒れ放題ね。
片付ける気にも起きないけれど。
多少散らかっている場所の方が、安心するわ。
(片付けをする人物に気がつくが
興味なさげに視線を外し、窓に歩み寄り
薄汚れたガラスに軽く片手をついて
観覧車、観覧車…♪
鮮やかさが逆にもの悲しくて…♪
…乗ってみようかな。
(白衣を羽織った若い男が、物珍しげにあたりを見回しつつ入ってくる)
九夜山の山頂近くにこんな場所があったとはな……知る人ぞ知る穴場スポットか
中は……やはり散らかってるな。それに埃臭い。だが生活できないほどじゃない(机にすっと指を滑らし付着した埃をしみじみ見つめる)
人もこないし、ゆっくりできそうだな。
……ああ、ここから観覧車が見えるのか
やっぱりシーサイドタウンの大観覧車には見劣りするな……でもなかなか風情があっていい
それにしても、ここの経営者は夜逃げしたのか?
机には珈琲の残滓がこびりついたマグカップが放置されて、コーヒーメーカーは使用済みで汚れていて、床には無数のファイルや書類が散らばっている。廃墟らしいといえば廃墟らしいが……
とりあえず片付けるか(白衣の袖を捲ってファイルを拾いだす)