対の衣装を着た精巧な造りの双子人形と
人形サイズの調度品が置かれている。
誰かがここで1人遊びしているとかいないとか。
7月×日
商品だった頃を思い返す。
泣けば飛んでくる罵声と暴力。
怖くて悲しくて仕方がなかった。
他の子達のあげる悲鳴。
胸が痛くて、何度も耳を塞いだ。
由良さんの優しさが嬉しかった。
怯える私の名前を呼んで
抱きしめてくれた優しい人。
時々、他の人たちにばれない様
こっそりお菓子を食べさせてくれた。
由良さんがくれたピンク色の
丸くて可愛いマカロンは甘い苺の味がした。
檻の中は地獄で、天国だった。
由良さんとずっと居られるのなら
地獄の日々でも構わなかった。
ずっとあそこにいたかった。
ずっと一緒にいたかった。
ずっと一緒にいて欲しかった。
何処を探しても見つからない。
私はこんなにも会いたいのに。
ありがとうって言いたい。
大好きだって言いたい。
また名前を呼んで、抱きしめて欲しい。
このままだと私は由良さんを忘れてしまう。
寂しい。寂しい。寂しい。
時間なんて止まってしまえ。
こんな世界は大嫌い。
これ以上、私の中から
由良さんを連れていかないで欲しいのに
時間が少しも止まってくれない。