(綺麗に整頓された部屋には
可愛らしいぬいぐるみが山ほど飾られている。
どのぬいぐるみにもリボンや
手作りらしい衣装がきせられており
どうやら、大切にされているようだ。
机には花柄のノートと
数本のペンが置かれており
中には丁寧な字で幾つかの文が書かれている。
このノートを覗くも文を書き足すも貴方の自由…。)
フェリタチに何かプレゼントを…。
リボン、似合うかな?
(繊細な刺繍がされた白い絹のリボンを取り出して
(PCを拙い手つきで操作し
WEBラジオの始め方、と銘打たれたサイトを見ながら
何やら作業をしている。)
うんと…。フリーソフトをインストール…。
これでいいの、かな…?
あとは、マイクを用意するだけ…?
あ、そう言えば…。
こんぶ茶が飲みたいって言ってた気がするのよ。
この間、テレビでお茶屋さんの紹介していた気がするの。
彼処になら、売ってるかな…?
姉様…帰ってきてくれるって…。
えへへ。
何が食べたいかな。
何を作ったら喜んでくれるかな…?
姉様…。会いたいな。
今何をしてるのかなあ…。
メールしたら、お返事返してくれるかな…。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…
やめて、お願い…
嫌…わからない…頭が痛いよ…
(苦しそうにうなされている。
どうやら寝言のようだ。
エリーヌ、あのね。
姉様に会えたの。
今度一緒に美術館にいくのよ。
美術館にエリーヌは連れていけないけど
今度、エリーヌも一緒にお出かけしたいね。
ノエル、姉様まだ大事にしてくれているかなあ。
(うさぎの縫いぐるみに向かって
楽しそうに話しかける。
【ノートの中の一文】
大丈夫、世界はきっと貴女に優しいわ。
【ノートの中の一文】
君を失う悲しみに比べれば
想う苦しみなど幸せな寄り道
【ノートの中の一文】
「じゃあ秘密を教えるよ。
とてもかんたんなことだ。
ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。
いちばん大切なことは、目に見えない」
【ノートの中の文】
6月×日
学校の中庭に空いた穴の底には
暗くて広い空間が広がっていました。
暗くて、とっても怖かったけど
歩いている内に、沢山の人がいる場所にたどり着いたの。
美崎さんと珠喪ちゃんもいて、嬉しかった。
みんなのお話は、迷い込んだ僕にはよく分からなかったけど
みんな、仲良しで楽しそうで
凄く羨ましかった…。
僕とお話してくれた人もいたの。
変わった雰囲気の男の子。
姉様のお友達みたい。
おどおどしてばかりの僕に、
楽しみましょうって言ってくれたその人。
ここにいてもいいよって、
言って貰えたみたいで、少し安心したの。
美崎さんに案内してもらって帰るときも、
また馬鹿騒ぎしましょうって言ってくれた。
また来てもいいよ、ってこと、だよね…?
優しい人…。もっとお喋りしたかったな…。
また、会えるといいな…。
姉様、どこにいるの…?
ただいま、エリーヌ…
(疲れた様子で部屋にはいってきて
ベッドの上に座る白いうさぎにそう呼びかけ
愛おしそうに抱きしめる。
どうやらぬいぐるみの名前のようだ。)
今日ね…とっても暗いところにいったの…
地下の不思議な人たち、沢山…
姉様もいるんだって…
姉様…あいたい、よ…
お話、僕にはわからなくて、淋しかった、けど
一人になると、もっともっと…さみしい、よぅ…
でも、また馬鹿騒ぎしましょうって…
またいってもいい、んだよね…?
うれしかった…
やさしいひと、ねえ、さま…
(ベッドに横たわり途切れ途切れぬいぐるみに話しかけながら
そのまま眠ってしまう。
どこか淋しそうだ。
(ノートの中の一文)
あなたのそばは、呼吸がしやすい。
ここにいれば、私は安らかだった。
だから私は、あなたのために絵を描こう。
(ノートの中の一文)
夜がやさしくて怖いのは
誰もいないからじゃない、
ひとりぼっちだからじゃない
誰かが居るからなんだよ
(ノートの中の一文)
うるわしき
貝はこの世に
数あれど
汝拾いし
貝御目うるわしゅう
(ノートの中の一文)
「恋ひ恋ひて
逢える時だに愛しき
言尽してよ
長くと思はば」