【星幽塔】薄闇よりの挑戦状｜リアクション

【星幽塔】薄闇よりの挑戦状

「さて、壊しましょうか」
　桜はボウガンを向けてそう言うも、サキリは首を横に振る。
「なぜですか、サキリ先輩」
「以前には敵として現れたアステリズムもいたよ。だから、壊すならエリオナイトが信用出来るという情報が得られてからだ」
「何悠長なこと言ってるんですか！」
　サキリがため息混じりに言った事に、桜は表情を険しくした。これを見つけて壊さなければどうなるか、知っているでしょう、と。だが、サキリは動かない。
「とりあえずキープしておいて、他のを見つけ出そう。壊すのはそれからでもいいと思う」
「わかりました。でも、危ないと思ったらすぐこのボウガンで破壊しますから」
　真剣な眼で言い放つ桜に、サキリは「いいよ」と１つ頷いた。

　優木遥斗は床に手を着き、作業台の下を見ていた。埃が積った石畳の上には隠すような場所がなく、やはり作業台の引き出しなどを見てみるべきか、と細かなところまで目を通す。
　下の引き出しから順々に調べていくも、そこにオーブや役に立ちそうな道具は無かった。ため息をつきながら作業台を見ると、朽ちた工具っぽい物が打ち捨てられている。
（使えそうにも無いか……？）
　遥斗が探っていると、辛うじて使えそうな工具をいくつか見つけることが出来た。だが、使いようによっては１回で壊れてしまいそうだ。
（もう少し探してみよう）
　遥斗はオーブと一緒に工具も探していた。開けられない物や場所があった場合に備えての事だ。だが、なかなか使えそうな物は見つからない。
「ちょっとしたゲームか……。ならば受けてたつまでなんだが」
「だけどさ。なんの意図があってなんだろうね。隅々まで探せって事はなにか伝えたいことがあるんじゃないかな？」
　ステラをおんぶしたまま作業をしていた桜庭円が、ふと呟く。彼女はそれとなくエリオナイトについてステラに問いかけてみる。と、ステラは困ったように首をかしげた。
「あんまり覚えていないの。でも、ちょっと違う気がするの。なんかこう、言葉には出来ないけど、もっとふわふわ～で暖かい人だった気がするの」
「そっかぁ」
　円は相槌を打ちながらも見つけたろうそくに火をつける。それを照明代わりに持ち歩きながら、ふとエリオナイトの事を考えた。
（んーどういう意図でのゲームなのやら……。隅々まで探させる意図とするなら何かを伝えたいって所かな？でも、大分理性的に感じるなぁ）
　脳裏に、作業着姿のエリオナイトを思い浮かべる。その服装から彼女が職人だったのかな、など推測しながらも円は体を軽く伸ばす。
「ボク、ちょっと二階もいってみるね」
「わかった。桜庭も気をつけて」
　ステラを背負ったまま歩き出す円を見送り、遥斗は１人重要なものが無いか探し続けた。

　椿美咲紀は魔風の力を使い、風をおこして音を集めていた。何かの接近に備えるだけではなく、風を使って隠し部屋などの捜索も行っていたのだ。
　だが、埃がたってむせてしまう。美咲紀は前もって話しておけばよかった、と後悔しつつも既に見つけられたオーブを見た。
（あのオーブだけ何故黒い炎？　炎の色が別の色に転化したらこの廃墟が復活するとか無いかしら……。廃墟ってことは忘れられた記録とか、古くからの知恵とかあると思うし、関係のある資料とかあるといいなぁ）
　そんな事を考えていると、１人の冒険者がコインっぽいなにかを拾っているのが見えた。
　少し離れた作業台を調べていた鮫ノ口礼二郎は、まだ使えそうなメモ紙とガラスペンを見つける。使用できそうだとにらんだ彼は、己のろっこん『脳内ビデオガム』で記録した事を記しておく事にした。
（今回はまだ使ってはいないが、用意しておくに越したことは無い）
　そうしながらも、手がかりになりそうな道具を探していく。……が、そこで気が付いたのは、道具によっては星座のマークらしき物が標されていた事だった。
（このガラスペンには、おうし座のマークが入っているな。メモ紙の方にはてんびん座のマーク……。他にも探してみよう）
　そう思っていくつかの道具も見ていると、１２星座の全てのマークを見つける事が出来た。だがへびつかい座のマークだけが見つからない。
（気のせいか？）
　不思議に思っていると、足元にコインが落ちていた。装飾はほとんど削れていたが辛うじて十二星座の印は読める。
「金貨は、使われてる社会で高位・崇拝の対象者が模されていることが多いの。真ん中に描かれた横顔の女性が、エリオナイトに似ているなら、アステリズムってのは本当かもしれないけど」

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【星幽塔】薄闇よりの挑戦状

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