【中間テスト】そんなこんなの最終日｜リアクション

【中間テスト】そんなこんなの最終日

　刀は心地よい闇に包まれていた。舟に乗っているような揺れを感じる。焦りのようなものが生じて声を出した。
「……あ、はい？」
「お客様、大丈夫ですか」
　若いウエイトレスが心配そうな顔で立っている。その姿を見て刀は喫茶店にいたことを思い出した。
「え、ああ。少し疲れてたみたいで」
「お連れ様の方は」
　横に目をやると海が刀の前腕を枕にして眠っていた。
「やっぱり疲れてるのかな。俺が起こしておきます」
　ウエイトレスは納得した様子で、わかりました、と一礼して持ち場に帰っていった。
「いつから寝てたんだ？」
　テーブルにはコーヒーカップが置いてあった。刀は海を起こさないようにしてカップを手に取った。湯気は出ていなかった。
「温いな」
　一口でカップを置いた。そっと顔を横に向ける。注文したプリンアラモードのホイップが半ば溶けていた。視線をゆっくりと下ろし、刀は海の寝顔を見つめた。柔らかそうな白い頬に、苺のシロップが掛けられたかのように色付いている。
　刀は生唾を飲み込んだ。その音は意外と大きい。海がもぞもぞと頭を動かして目を開けた。
　慌てた様子で跳ね起きて口元に手をやる。赤い顔で目にしたスケッチブックに急いで文字を書き込んだ。
『みた？』
　その文字に刀は激しく目を泳がせた。
「見てないことはないけど、可愛い寝顔だったよ」
　海は赤い顔で縮こまる。刀は困って店内に目を向けた。先程のウエイトレスが微笑ましいものを見るような目で笑っていた。
　刀の顔も赤くなり、二人は仲睦まじい姿で時を過ごした。

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