【中間テスト】そんなこんなの最終日｜リアクション

【中間テスト】そんなこんなの最終日

「……終わった」
　椅子の背もたれに上体を預けて望春は悲しい笑みを浮かべている。
「睡眠学習の効果ってないんだな」
　昨晩は勉強の途中で深い眠りへと陥った。夢の中で引き継がれ、目が覚めた時には手応えのようなものを感じていた。
　その結果が今である。ははは、と望春は乾いた笑い声を上げた。最後に大きな溜息を吐いて決着とした。
　終わってしまったことを嘆いても仕方ないよな。テスト期間中はずっと我慢してたんだし、今日くらいはゲーセンに行ってパーッと遊んでもいいかな。
「いいよな」
　その明るい表情が答えであった。

　学生が多く集まるゲームセンター内は制服を着ていても目立つことはない。未だに根強い人気があるパンチングマシーンには男子が群がっていた。教科の名前を叫びながら殴り掛かる。表示された数値に居合わせた全員が驚きの声を上げた。
「俺の場合は『物理、消えろ』って叫べばいいのかな」
　望春は横目で見ながら奥へと向かう。音楽ゲームの筐体が犇めき合う一角に出た。疎らに人はいたが結構な数の空きが見て取れる。
「知り合いはいないみたいだな。ま、練習にはちょうどいいかな」
　望春は足で矢印を踏むタイプの筐体に向かった。硬貨を入れて軽くステップを踏んでみる。
「どうかな」
　左右の大型スピーカーから軽快な曲が流れ、正面の画面に次々と矢印が表示された。望春は動じず、精確にステップを刻む。曲の中盤を越えた辺りで少し息が上がってきた。足の動きにも乱れが生じた。
「ちょ、ちょっと待て。速いって」
　凄まじい矢印の連続に足が縺れる。何回か踏み損ねてゲームが終了した。
「こんなに腕が落ちてるなんて。格ゲーはやめて音ゲーに集中しようかな」
　望春は物色するように歩いてタッチパネルの音楽ゲームに挑戦した。速い調子の前奏に表情が厳しくなる。
「やばいかな？」
　激しいライブ映像が画面に映し出された。毒々しい化粧を施したボーカルがステージ上で激しく頭を振っている。耳をつんざくようなシャウトから始まった。火花のようにタッチする箇所が表示され、望春は必死になって食らい付く。長押しやスライドが織り交ぜられ、反応は鈍いながらも健闘した。
　叩き出した点数にそれなりの笑みを浮かべた。
「少しのミスはあったけど、まずまずかな」
　気を良くした望春は他の筐体に目をやる。最新の格闘ゲームが目に付いた。
「対戦に備えて練習しとこうかな」
　望春は軽く指を鳴らし、挑戦者の面構えで歩いていった。