【ハロウィン】寝子島神社で仮装行列をしたっていいじゃないっ！｜リアクション

【ハロウィン】寝子島神社で仮装行列をしたっていいじゃないっ！

　寝子島神社境内を練り歩くコスプレ行列の中に、乙女ゲーム『ニャンド・オブ・フォーチュン』のヒロイン、ララの魔法学校の制服のコスプレをした羽生碧南の姿もあった。
　一時は１８０センチある自分の身長のせいで、なかなか着られる衣装が見付けられず、かといって自分で作る事も出来ないでいて、

「……高身長女子には好きなゲームのコスプレもできないの……？」

　と悶々としていたのだが、参加ギリギリになってネットの高身長女子向けの衣装を取り扱っている貸衣装業者を見つけ、大急ぎで現地へ飛んで何とか衣装やアクセサリー一式を調達する事ができたのだ。
　容姿だけで言うなら碧南もそれなりにかわいいのだが、その高身長故に普段から合う服がなく、Ｔシャツなどのラフな服装をせざるを得ない事が多い碧南にとって、今日はそのハンデを乗り越えて、好きなゲームのコスプレをできた記念すべき日なのだ。
　碧南は先日までの落ち込みとは打って変わって、気分はウキウキドキドキだった。
　他の参加者たちも、碧南のコスプレの出来栄えに目を奪われていた。
　碧南自身も予想以上の仕上がりにテンションが高く、コスプレ行列に並びながらもゲームの甘々なシーンが脳内で再生され、思わずにへらと頬が緩んでしまう。

「すいませーん。こっち目線もらえますかー？」

　碧南に声をかけてきたのは灰色のもふもふしっぽと大きい耳を付け、白ドレスシャツに大きなリボンタイを結んで狼男伯爵に扮した蜂矢時生だ。
　時生はデジカメを手にコスプレ行列に参加する人々の写真を思い思いに撮っていたのだが、中でもひときわ目立つ碧南を見つけ写真を撮らせて欲しいと頼んだのだ。

「君は『ニャンド・オブ・フォーチュン』のララだね？　良く似合ってるよ凄いなぁ……」

「ありがとう。なかなかサイズの合う衣装が準備できなくて苦労したけれど、何とか調達できて良かったわ……」

　碧南は褒められて照れながらも、時生のリクエストに答えていくつかポーズをとって写真を撮ってもらう。

「あっ！？」

　撮影は順調に行われているように思われたが、時生が異変に気が付いた。
　時生のカメラに目を奪われ、注意が疎かになった碧南のスカートの中を後ろから撮影する姿を見つけたのだ。

「盗撮だー！」

　時生があげた大声に盗撮魔はあたふたとカメラ片手に逃げ始める。
　そこへ声を聞きつけて駆けつけた伊藤夫妻が立ちふさがり、盗撮魔を追い詰めた。

「武正さん、今よ！」

　恵美はそう叫ぶと武正の腰に吊るしたランタンを指さした。武正は訳が分からないながらも、とっさに言われた通りランタンの蓋を開けると、突然その姿は不気味な青い光に覆われた。
　中に仕込んだ豆球と青いセロハンを組み合わせた効果だが、その姿はまるで武正が青い焔のオーラをまとったかのように見えた。

　たちまち有無を言わさぬ勢いで、武正は剣道有段者の実力を見せつけ、抵抗する盗撮魔をふん捕まえて、警察に引き渡した。

「素敵！」

　恵美はすっかり活躍に気分を良くすると武正に抱きつきキスをする。
　武正はたちまち恥ずかしさから顔を真っ赤にしてしまう。

　時生はそんな伊藤夫婦の微笑ましい姿も思い出の一つとしてシャッターを切って写真に納める。

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