餃子の闘将｜リアクション

餃子の闘将

　じゅっと音のしそうな、海洋に没する夕日と例えたのはだれか。
　壮麗な夕暮れが終わり、東の空から夜が押し寄せてくる。

　パックに露草の餃子を詰めてもらうロシィ。
　マーマへのお土産だ。
「ヘルシーなのがいい！　マーマ喜ぶ！」
　ニコニコ笑って、餃子をおまけする露草。つくづく、クールな美青年であることが謎である。
　
　スマホを購入するバイト作戦は頓挫したが、志田朝陽は満足だった。
　体も動かせたし、お腹いっぱい食べることができた。
（でも、周りの人たちが、避けている気がしなくも……）
　若い彼が、その健康的な臭気で数日周りを悶絶させるのに、彼はまだ気づいていない。
　
　徐々に少なくなっていく屋台。
　洗い場の人影の中に、うさぎ屋で大量に飲み食いした連中の姿もあった。
　金欠の陽毬、まさかの初日からの皿洗いである。
　なぜか付き合わされる流。
　皿洗いで食費が浮くのなら安い、と思ったのか、残った餃子をひたすら食べる瓢。
「底なしっぷりをお目にかけよう」と言いつつ、ガンガン餃子を処理していく。

　最初から最後までアホほど食った男。

「御馳走さまでした！　美味しかったです！」
　律儀に頭を下げる刀。
　彼だけではなく、みんなよく食べよく作った。
　綾花は、結果発表で全力で拍手した。
　なんだかわからない闘将の登場でどっちらけになりそうだったが、それでも盛り上がった。
　餃子を食べて、作ることで、一つにつながれたような気がする。
　――みんな凄いって、思うから。
　
　瞬く間に広がる星空を見ながら、綾花は空腹を覚える。
（応援しすぎたら、お腹がすいたかも）
　手に提げた、生の餃子を見て、彼女は微笑む。
（……夕食も餃子で、決まりです！）
　

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