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秋の読書週間
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騒がしい通路を抜け、やっと静かになった窓辺の席に葉月は腰掛け、服飾の歴史書や画集を置く。授業で使うものとは異なるタイプの物が気になり奥まで足を伸ばしたが、まさかあんなに騒がしい人とぶつかることになるとは思わなかった。これでは、小休憩を挟んで美術室に残っていた方が良かったのかもしれない。
とはいえ、気になる本を見つけてしまった手前、戻してまで図書室を後にしようとは思わなかった。あまりに先ほどのことが気になり続けるなら、適当に目を通して早々に貸し出し手続きをしてしまえば良いのだから。
そうして歴史書のページを捲り、長い睫毛の伏し目がちな瞳が文字を追う。その密なる内容に後ほどゆっくり読もうと一度畳んで脇に置き、次に手を伸ばしたのは単なる画集かと思っていたが服飾史のものだ。色や模様、素材に至るまで変化するそれは、興味を惹かれるもスケッチブックに質感を描きたくなるようなところまで意欲が沸かない。だが、ゆったりとページを捲っては止まる手元は、何かを探すようにその模様が流行った理由などの説明が書かれている文に指を滑らせる。
(ええと……あれではない、ないですよね)
葉月の背後から、行儀が悪いと思いながらも
錦織 彩
は彼女の読んでいる本にチラチラと視線を彷徨わせる。横に置かれた他の服飾関係の本にスケッチブック、探している本を持っているのかと思ったが違ったようだ。仮に、彼女が持っていたとして「少しでいいから見せて欲しい」などと見ず知らずの人に声をかける勇気を持ちあわせてもいなければ、物憂げにページを繰る姿がまるで絵画の登場人物のように静謐で、あまりにも繊細で、あまりにもメランコリックで……近づきがたい。
(……おかしい、なぁ。検索では、貸し出し中には……なってなかった、んですけど……)
目当ての本が棚にはなく、手近な席で誰かが読んでいないかと邪魔をしないよう探してみるも、見当たらない。文化祭も近づいてきているので、刺繍のデザインの参考になるものは無いかと思ったのだが、検索の仕方が悪かったのだろうか。
図書委員に聞いてみようか、でも仕事の手を止めて煩わせるくらいならまた明日見に来れば……と思ってふと気付く。ほど近い机の上で無造作に積み上げられた中に、目当ての本があった。
さて、見つけたは良いものの……積み上げているならば、今は読んでいないということになる。もしかしたら借りるつもりでキープしているのかもしれない。だとすれば、明日にはもう図書室からは無くなってしまっていて、次に手に取れる日はいつになるかわからない。
図書室が閉まるまで、読んでいない間だけ、帰るまでの少しの時間だけ見せてもらえないだろうか。どう声をかけるかシミュレートして、彩は深呼吸して本の持ち主を見た。
(……あ、れは、ええと……同じクラスの、倉前さん……)
顔は覚えているが、喋ったことはない。いやあったかもしれないが、人見知りに輪をかけて異性相手は緊張するものだ、よく会話中に取り乱している自覚はあるので記憶が定かで無い。
(き、聞いてみようかな……で、でも、今も本を読んでるところみたいだし……邪魔したら怒られるかもしれないし……そもそも私のことなんか覚えてないかもしれないし)
いつも隅のほうでコソコソとしている自分など、存在感はないのかもしれない。そもそも、クラスメイトなら気を悪くされないという保証もないのだ。どうしたものかと本の背表紙と
倉前 七瀬
の顔を何度も見比べていれば、当然その突き刺さるような視線に気づかれてしまった。
「おや、彩やなかですかー。どげんかしましたか?」
「ひぇっ!? ごごごごめんなさいっ」
何に対して謝っているのだろう。読みかけの本に指を挟んで閉じ、持ったまま周囲を見渡して見るが、特別変わった様子はない。
「すみませんなぁ、読むんに夢中なっとったから、彩がどげんかしよったか、ちぃとも気づかんで」
「ああああ、あのっ! 読んでる邪魔をしてしまってごめんなさい!」
「ん? 僕の場合は読書言うんやろか……文字さえ書いちょったら図鑑でもレシピでも、何でもええですからねぇ」
彩が怯えている理由など知らず、寧ろ怯えてるとさえ気づかない七瀬は雑多に積み上げた本の上を叩き苦笑する。その顔に怒らせていないこと、話しかけてもらえたこと、さらには名前まで覚えてくれていたことに嬉しくなった彩は、おずおずと探していた刺繍を主に扱っているデザインの本を指さした。
「えっと、あの、それ……その、その本を……ですね」
「ああ、この本ば探しよんしゃったとですか? どうぞ」
山から数冊とり、これで間違いないかと聞けば返事はなく首を大きく縦に振っている。そこまで必死に探している人がいるとは露知らず、雑多に本を取ってきすぎてしまっただろうかと山を見るが、それはその時だ。このようにジャンルがバラバラに積み上げていれば調べ物をしているとも思われないだろうし、声をかけられたら譲ればいいのだから。
「あの、ありがとうございます……その、さささ参考にしようと思ってた、ので……」
どもりながらも小声で、ゆっくり返事をする彩に七瀬は図書室であったことを思い出す。窓際のほうでは葉月が横目にこちらを見ていたが、軽く会釈をするだけで彩に向きなおり、座るように促しながら隣の椅子を引いた。その音と動作に彩は驚くも「まあまあ」と再び促されれば断ることも出来ず、隣に腰掛けることにした。
「刺繍は楽しいですか?」
「え? えっと、一針一針……最初は、訳の分からない点や線のように見える、と思います。でも、少しずつ完成に近付いて行くのが……楽しい、です」
静かに相槌を打ちながら、七瀬は自分の持ち物を振り返る。普段は特別気にしないシャツの胸元やハンカチなどに入っていた気もするが、ああいうものは機械作業だろうか。もし手作業となると、とても時間がかかりそうだ。
「少しずつと言われたら、なんや気の遠くなる作業のように聞こえますな……誰でも簡単にできますか?」
「もっ、勿論高度なテクニックが必要な物もあります。あ、でも全部がそうじゃなくって、えっと、初心者でも簡単にできるものも多くて……」
折角手渡してもらった本を硬く握りしめたままだったので、説明しやすいものはないかとページを捲っていく。単純そうな形に見えて、綺麗に整えることが難しいことだったり、絵画のように色が混在していてこれが手作業なのかと感心してみたり、七瀬は彩の話す速度に合わせつつ会話にも興味をもってくれる。
ただでさえ男性とこんなに会話が続いたことは久しぶりだというのに、続いたというよりも弾んだといったほうが当てはまるようなこの時間が、彩はとても楽しい。
「今はどういうものを作っとるんですか?」
「今ですか? リボン刺繍を既存の布製品にワンポイントとして……」
――ガタッ。
あまり大きくはないが、少し机が揺れた。葉月が少し椅子を引き、スケッチブックを机に立てかけやすい角度になるよう調整して鉛筆を滑らせはじめたようだ。
(この画集そのものに、もう少し何かと思っていたけれど……そうね、刺繍も悪くないわ)
普段から私服を手作りするほど服飾のデザインセンスが長けている葉月は、様々なアレンジを施してスケッチブックを埋めていく。こうしたデザインは後々使用することもあれば描くだけになってしまうこともあるが、こうして描くことが何よりも大切なことだ。今まで気になっていた耳障りな音が一切遮断され、自身の世界に入り込みだす。
「え、えっと……私がうるさくして怒らせてしまった……のですかね」
「いやいや、あれは彩の刺繍の話が聞こえて、何か閃いたんやと思いますよ?」
「で、でも、あの」
葉月の斜向かいに座って貸し出し手続きの本の世界にのめり込んでいた海は、間近に聞こえたスケッチブックに何かが描き込まれる音にふと顔を上げ、彼女が迷いなく手を動かし、イメージが既に固まった上で描いていることに気付く。対象を素早く描写するクロッキーとは違い、デザインは見本がないものだ。読んでいた本は端にまとめあげられていて、画集を模写している様子もなく、視線はスケッチブックにのみ注がれている。
(先輩……かな? どんな絵を描いてるんだろ)
気になるし、参考にしたい。でも邪魔は出来ないし、本の続きだって気になる。今はちょうど、親しいグループが一つの目標に一致団結して進もうとしていた所に恋愛の諍いが絡んできてハラハラしている所だ。このまま結末まで勢いよく読んでしまい、帰宅してからゆっくりと噛み締めながら読み直したい。
本に視線を戻し、再び世界に戻っていく。この作家はテーマが一辺倒にならず、他の要素を絶妙に加えることでメインテーマをより盛り上げる。まるでそのグループが隣で頑張っているかのような息遣いを感じることもでき、惹きつけられてしまう。
彼らが走る先に何があるのか。それを追いかけるように、海はページを捲る手を早めた。
――キーンコーンカーンコーン……
図書室に下校を知らせるチャイムが鳴り響く。
ある者は本を戻し、ある者は慌てて貸し出し手続きに走り、参考書を脇に置いたまま読書に没頭していたことに気づいて頭を抱える者までいた。
こういった駆け込み作業はいつものことだ、綾花はカウンターで手際よく受付をし、いいなも男性を極力避けてだが返本したい生徒から本を受け取って片付けていく。もし読書をしながら図書室を出ようとする者がいれば珪が優しく注意をし、なんとか今日を乗り切った。
「二人とも、お疲れ様。どうやら読書週間は上手く行きそうだね」
仕事が増えるということは、利用者が増えた証。図書委員の二人に珪が労いの言葉をかければ、綾花はこれからも頑張ろうと微笑み、いいなはその少し後ろでかしこまってしまっている。
「大田原さん、だったね。委員会の仕事で、何かわからないことはあったかな」
「いや……儂は中学時代も、その……していた、ので」
新しく入ったのだと聞かされてはいたが、随分と人見知りをするのか、もしくは――珪は世話を焼きたくなるのをぐっとこらえ、委員会を辞めたいと言われぬように初顔合わせでは適度な距離感で応対しようと図書室の扉を開けに背を向ける。
「さて、窓の戸締りや机の整理も終わったし、今日の業務は終了。また当番の時はよろしく頼むね」
「で、ではお先に失礼して……」
これからお世話になる人だ、苦手など言っていられない。いいなは廊下に駆け出すと珪の顔を一瞬だがしっかりと見つめ、大きく頭を下げて帰路についた。
静かな図書室に二人きり。昇降口まで一緒に行けないだろうかと珪の顔色を窺う綾花の気を知ってか知らずか、手にしているゴミ袋を見て微笑みかける。
「ああ、今日は人が多かったから、いつもよりゴミも多いかな。重い?」
自然と差し出された手に、つい手を重ねてしまいそうになるが、そうじゃない。見惚れてしまっていた綾花は両手でしっかりとゴミ袋の結び目を掴み直し、慌てて首を振る。
「いえっ、そんな……っ! これくらい、大した重さじゃないです!」
「そっか。大した重さじゃないのなら、僕が貰おうかな」
流れるような自然な仕草に、しっかり握っていたはずのゴミ袋がさらわれる。今からゴミを捨てに焼却炉へ向かうなら、靴を履き替えるはずだ。もう少し長く、一緒にいられる。緩みそうになる頬を引き締め、綾花は丁寧に頭を下げた。
「ありがとうございます」
「こちらこそ。綾辻さんが本のデータ入力とか頑張ってくれるおかげで、僕の仕事が減っているわけだからね」
「それも委員の仕事ですから」
仕事ぶりをちゃんと見ていてくれている。好きな相手が知ってくれているのは、こんなにも幸せなのかと笑顔で答えると、珪は優しく微笑んだ。
「綾辻さんは、本当に本が好きなんだね。司書として僕も嬉しいよ」
本も、もちろん好きだ。図書委員の仕事だって嫌いじゃない。だけど――冷静に、冷静にと心を落ち着かせようとする度に、余計空回ってしまっている気がする。
「だから、その顔。僕が先生だからって、しっかりしてようって思わなくていいよ。本が大好きだって自然に笑ってくれている方が、同じく本を好きな人を呼んでくれそうだから」
「――はい!」
本当の理由は違うのだけれど、取り繕う必要がないと言われるのは恥ずかしくも嬉しい。それが珪のお節介な部分からくる、生徒を和ませようとする気持ちなのかもしれないが、それは綾花にはわからない。
ただこんな風に、和やかな時間が続けばと願ってしまうのだった。
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あとがき
担当マスター:
浅野 悠希
ファンレターはマスターページから!
皆様、ご参加ありがとうございます。
そして、復帰1作目にも関わらず、作品の公開が遅れてしまい申し訳ありません。
前2作が恋愛系だったので、秋だししっとりした恋愛系アクションが多いかな~と思っていたところ、
『中間テスト』という話題に、すっかりそんな季節だということを失念していました。
真面目に勉強された方、読書以外の秋を謳歌された方……その発想力を見習わせて頂きたいものです。
今回は、久しぶりの執筆で何が増えているのか把握しきれていなかったこともあり、高校限定とさせて頂きました。
今後は猫恋の鐘のように、他の年代の方々が参加できるようなシナリオガイドも提案していきます!
そちらもお楽しみ頂ければ幸いです。
それでは、またご参加頂けるような物を書けるよう精進してまいりますので、何卒よろしくお願い致します。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
浅野 悠希
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
学校生活
恋愛
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年03月28日
参加申し込みの期限
2015年04月04日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年04月04日 11時00分
参加キャラクター一覧
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