【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～寝子高バザール！｜リアクション

【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～寝子高バザール！

●エレナ陣営：エレナのビューティフルショップ　その１

　バザールの入り口すぐ、先程小学生たちが「一万円のチケットだって！」と驚いていた『次期生徒会長と言われる女』を自称してやまない剣崎エレナ嬢の陣営では、長い髪も麗しいお姉さま――じつは彼女、大田原いいながろっこん＜ＴＲＡＮＳＭＵＴＥ＞で変身した姿なのだが志波陣営にいる叔父に配慮してみんなにはナイショである――が、自分をこの陣営に誘い込んだ主でもある八十八旗信彦相手に、びしっと人差し指を突き付け捲し立てている。

「まったく……お手伝いに来てみたらなんなのこの惨状！　１万円のダンスチケットに握手券？　しかも１０枚で１回とか小さく書いてあるってサギなの？　誰よこんなの考えたの！」
　ぴゅーぴゅー口笛を吹く桜崎巴。こいつの仕業である。まあいいのだ。巴の真意は剣崎財前大戦を勃発させることであって、握手券はまあ、戯れみたいなものである。
（あたしのプランはこうさ。剣崎先輩が勝つ→財前先輩が邪魔して機能不全→猫鳴館勢が漁夫の利となる生徒会を目指して暗躍……くくく。いいじゃないか）
　そして巴、店を手伝う気はまったくない。
　
　いいなは旧市街地のお好み焼き屋『うさぎ屋』の女の子なので商売的なことがいろいろ気になるのだろう。大人いいな――デネボラさんは、あれこれビシバシと指導を入れる。もしかしたらこのイライラのせいで心拍数が上がりっぱなしなのかもしれない。

　信彦はタジタジとなりながら、この陣営の基本戦略について説明する。
「可愛いレディやカッコイイ紳士が売り子や呼び込みをやれば、きっと売れるはずだと俺は信じてるよ！　『私の手作りです』などの口説き文句があれば尚更盤石なはずさ！」
「で、その可愛いレディやカッコイイ紳士はどちらに？」
　こめかみをひくつかせながらデネボラが尋ねる。
「まずはここにいるじゃないか」
　信彦はさも当然という顔で和風の袴風メイド服姿のデネボラさんを指し、
「それからちーちゃん」
　と彼のガールフレンド（※文字通り女友達である念の為）を指す。

「ん？　どうかしたかい？」
　白を基調としたメイド服を纏った上穗木千鶴が、水出しのお茶をお客さんに注ぎ終え、振り返る。両腕の袖と袖をつなぐ謎のリボンが胸の下を通るように飾り付けられているお蔭で、千鶴の発育のよい胸はいつも以上に強調されていた。噂に聞くところでは『例の紐』という名前らしいが、千鶴にはそういう知識はなかったようで、腕を上下させるたびに胸がぽわんぽわんと揺れて男性の視線を釘付けにしていることについては、まったくの無頓着である。もしかしたらこの無防備なおっぱいもデネボラさんのイライラの原因かもしれないが……。

　一方、カッコイイ紳士の方は信彦本人はもちろんだが、もうひとり、強力な助っ人を呼んである。
　向こうからやってくる軽そうな彼。綺麗なお姉さんを見かけては振り返り、声を掛けようと片手を上げるも声を掛けそびれ肩を落とし、また綺麗なお姉さんを見かけては、今度はあまりに美しすぎてつい目を逸らしてしまっている彼。ちょいと女性恐怖症気味な泣き黒子の彼が、信彦を見つけ、手を振ってやってくる。

「うぇーい！　ホスト部部長こと八城昌也がお手伝いにきましたよ～♪」
「さんきゅー、やしろん！」
　昌也はホスト部仲間の信彦とがっちり固い握手をしたのち、柔軟体操に余念がないエレナの前に跪くと、白い歯を見せキラッと笑った。
「エレナ先輩、今日も一段と輝いているようで何よりです♪」
　するとエレナも微笑み返し、女王の如く気品あふれた眼差しを昌也に向けた。
「ビューティフルショップの名に恥じぬ働きを期待しているわ。よろしくね」
「もちろんですとも」
　ナイトのようにお辞儀して、昌也は早速打ち合わせに入る。

「さてさて、信彦くん。俺達は何を売るのかな？」
「ダンスチケットと握手券、それから広島焼きと緑茶さ」
「広島焼きに緑茶か……」昌也は華麗にダンスチケットと握手券をスルーした。「おっけーおっけー！　飲食店だね。接客なら任せといてよ♪」
　もみじにいいな、千鶴に昌也。接客スタッフは十分だ。――これは、結構期待できるかもしれない。