装飾譚：パジャマ「スリーピングローズ」｜リアクション

装飾譚：パジャマ「スリーピングローズ」

　可愛いパジャマがあると聞いて「スリーピングローズ」を訪れた高梨彩葉。
「うわぁ。シーツや目覚まし時計も可愛いのがいっぱいあるねー」
　レースがふんだんに使われた枕カバーを手に取りながら、うっとりと呟く。欲しいものはいくらでもあったが、彩葉の本日のお目当てはパジャマである。心の中で我慢我慢と呟きながら店の奥に進んだ。
　幸いと言うか、見えるところにクラスメイトの姿はない。彩葉は人の目を気にすることなくパジャマ選びに没頭できた。
（お、ネグリジェだ）
　実物を見るのは初めてである。写真や漫画で見たネグリジェはセクシーなものが多かったが、今目にしているものは大きめなリボンとシフォン素材の袖がポイントの可愛らしいデザインだ。体のラインが適度に出るので大人の女性向けかもしれない。
（将来こういうのも着こなせるようなあざとセクシーな女性になりたいなぁ）
　たまにはこういうものに挑戦してみようか。と、手に取り
（い、いやっ。こういうのを着て大人っぽい雰囲気を楽しみたいとかじゃなくてっ！）
　と心の中で叫んで戻し……を数度繰り返す。最終的には早歩きでレジまで進んで自宅用に包んでもらった。買い物が済むと気恥ずかしさゆえに俯きながら足早に店を去る。
（ううっ。無性に恥ずかしい！　早くここを離れよう！）
　謎の気恥ずかしさで頭が真っ白になっており、彩葉は同じ寮に住む羽生碧南とすれ違ったことにも気が付かなかった。
（彩葉ちゃん、ずいぶん急いでたみたいだなあ）
　碧南は彩葉に気付いていたが、つむじ風のように店を離れる様子を見て声をかけるのは控えた。帰る場所は同じである。彩葉はこの店のショップバックを胸に抱えていた。買い物に時間がかかってしまったのかな、と予想する。
（寮に戻ったらお互いの見せあいっこできたらいいな）
　自分の思い付きがとても楽しそうで、碧南はにこりと目元を和ませた。

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