Ciger Bar　「琥珀」｜リアクション

Ciger Bar　「琥珀」

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「……あの、わたし、今まで煙草吸ったことないので分からないんです……」
「そうか、興味はあるか？」
「ええ、少し……」
　小さく頷く理紗子を見て、瑛華は大きく頷いた。
「じゃあ、せっかくだからやってみるといい。……まあ無理強いはしないが」
「では、せっかくなので……お勧めのものを」
　おずおずと注文をする理紗子に、店主は頷いて一本の葉巻を取り出す。
　世界で最も有名な葉巻と言われている一本をカットし、シダー片で丁寧に炙ってから理紗子へ差し出した。
「葉巻はゆっくり吸い込んで、けして肺には入れないようにな」
　瑛華の言葉を受け、不慣れな様子で理紗子は葉巻を銜える。
　ゆっくりと吸い込んだつもりが、煙が肺に入ってしまったのだろう。思わず葉巻を口から離して咳き込んだ。
　瑛華は理紗子の背中をそっとさする。
「すみません……」
「初めてなんだろ？　そんなもんだ。口の中に煙を溜める感じで吸うといい」
　喉に残る香りをカクテルで流し、次は肺まで吸い込まないように吸ってみる。
　今度はむせずに吸うことが出来、理紗子は胸を撫で下ろした。
「グラスが空いてるが、何か飲むか？」
　空になったカクテルグラスを指差し、忍が問い掛ける。
「ええと、じゃあ……これに合うものに……」
　メニュー表を見ながら悩む理紗子に、満が声を掛けた。
「葉巻に合うものなら、ラム酒がお勧めだ。ウィスキーで楽しむ者達も多いな。飲むならストレートがお勧めだ」
「あ、じゃあ、ラム酒をストレートで」
　満は笑顔で頷いて、グラスにラム酒を注いでいく。そして、チェイサーと共に理紗子の前へ置いた。
「ストレートは強いからな、もし酔ってしまいそうならチェイサーを挟むといい」
「はい、ありがとうございます」

「……そうだ、葉巻が欲しくなったらうちに来るといい」
　瑛華は忍を見ながら言葉を紡ぐ。
「旧市街で『檀屋』という煙草店を営んでいる。もちろん、それも取り扱っている」
「本当か？　じゃあ、次の機会に寄らせてもらおうかな」
「ああ、葉巻だけでなく水煙草や刻み煙草、嗅ぎ煙草なんかも扱っているから、何か試したくなったら立ち寄ってくれ。……そちらのあんたも」
　もう一本のパイプにバニラの着工ものの煙草葉を詰めながら、瑛華は自分の店の紹介をする。
「私は店主の御堂地瑛華。こうして会ったのも何かの縁だ。来てくれたらサービス……はしないが、雑談くらいには付き合おう」