【体育祭】七色のパン食い競争　白猫組サイド｜リアクション

【体育祭】七色のパン食い競争　白猫組サイド

【epilogue(1)】

「どうしよう？　あたし、一位とれるなんて思わなかった……！」
　一位のフラッグを手に、鴇波羽衣さんは嬉しさと恥ずかしさに随分と動揺してしまっているようでした。
「あと少しで追いつけたと思ったんだけどな。でも、あのジャンプは凄かったよ」
「えへへ、ありがとう」
　二位のフラッグを手にした御剣刀くんの言葉に、羽衣さんは照れたように笑います。

　三位は羽生碧南さん、四位はティナ・フォルトゥスさん。
　二人は本当に僅差でした。
「さつまいもパンおいしかったー」
「あずきパンも大変美味でしたわ。普通過ぎて少し物足りない気もしましたが」
　碧南さんとティナさんが順位よりもパンの感想を口にして、周囲が温かい笑みに包まれます。

　五位は晴海飛鳥さん。
「まったく面白みに欠ける順位ではあるけれど、まあチームに貢献できたのだからよしとしようか」
　少し複雑そうな飛鳥さんでしたが、今は素直に自分の順位を喜ぶことができているようです。

　六位の後木真央さんは順位そっちのけで残った牛乳を飲みにサンマさんのところへ戻っていました。
「……牛さん。真央ちゃんは頑張ったのだ……。ああ、毛がぬくぬくなのだぁ～」
　よほど飲み過ぎたのか、全て平らげた真央さんは牛さんをベッドにしてしばし心地よい眠りに身を委ねていました。

　澪乃澄佳さんは七位でした。
「う、うう、お腹一杯だようっ！　でも、いい順位につけてよかったぁ。これも牛さん達がいっぱいミルクだしてくれたおかげだよね」
　澄佳さんはお腹が苦しそうでしたが、やりきった非常にいい笑顔を見せていました。

「……俺が……八、位……」
　飛吹勘助くんはまだ自分の八位という順位が信じられないようでした。
　彼は正々堂々と走りぬくことを目的としていたので、まさか自分が一桁台に入るとは思ってなかったのでした。
（これも、八神くんと後木さんのおかげ、だな……）
　勘助くんは先程きちんと言えなかったお礼をするべく、二人の姿を探して歩きだします。

「……あれ、僕はどうしてこんなところに？　パン食い競争は？」
　夏夜さん――もとい恵御納夏朝さんは校舎の陰で、はたと我に返りました。
「あ、恵御納さん。さっきのパン食い競争カッコよかったよー」
「……え？」
　クラスメイトにそう言われて、目を見開く夏朝さん。
　言われてみれば、お腹には異様な満腹感が。
「……」
　その瞬間、夏朝さんはさきほど慌てて走って転んだことを思い出して、自分の身に起きた全てを悟ります。
（頑張ったんだね、夏夜ちゃん……）
　ホロリ、と目尻に涙を浮かべて、夏朝さんは愛すべきもう一人の自分の健闘をたたえたのでした。

「……十位、か。最後の最後で諦めずに全力疾走した甲斐があったな」
　八神修くんは自身の残した結果に満足げに呟きました。
　と、そこにおずおずと飛吹勘助くんが現れて。
「あ、あの、八神くん……さっきは助けてくれて、ありがとう……」
　ちょっとしどろもどろになりながらも、ぺこりと大きく頭を下げてお礼を言います。
「ああ、飛吹か。気にするな。俺達はチームだ。助けあうのは当たり前だろう？」
「う、うん」
　にこりと微笑む修くんに、照れたように笑う勘助くん。
「あ、それからさっきの、後木さん、にもお礼を言いたいんだけど……」
「ああ、真央か。たぶんあいつならまた牛のところにいると思うが」
　二人がそうして牛さんのところまで歩いていくと。
「むにゃむにゃ。牛さん、もう真央ちゃん、これ以上は飲めないのだ～……」
　牛さんにもたれて、気持ち良さそうに寝言を呟く真央さんの姿がそこにはありました。
「……」
「……」
　修くんと勘助くんはそんな彼女の姿にしばし顔を見あわせて、弾けたように笑い声を重ねるのでありました。

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