【体育祭】七色のパン食い競争　白猫組サイド｜リアクション

【体育祭】七色のパン食い競争　白猫組サイド

【決して諦めない者達】

「さあ、トップグループのゴールはもう目の前だぜぇ！」
　マイクを握ったサンマさんが声高らかに実況をします。
　そんななかで、後続のグループの選手達もまたそれぞれの想いを胸に最後まで諦めずに走り続けています。

「……よし、食べ終わったっ！　あとは全速力でダッシュ！」
　お腹が痛くならないように、歩きながらパンを食べていた小倉もなかさんは食べ終わるや否や、残りの力を振り絞ってラストスパートをかけます。

「……なにかしら、これは」
　朝鳥さゆるさんはミドリ色のパンの苦みに思わず顔をしかめながら、ぽつりと呟きました。
（……ひどい味ね。まあ、予想はしていたけれど）
　さゆるはこんなこともあろうかと残しておいた牛乳に浸してなんとかパンを食べ進めていき、最後の一口を牛乳と一緒に流し込むとそのままゴール目指してひた走ります。

　レナ・フォルトゥスさんは涙目でした。
（いったい誰がこんなヒドいパンをつくったんですのっ！？）
　レナさんが食べているのは青い縞模様のパンツをかたどった青縞パンツパン。
（牛乳はなんなく飲めましたが、これはエグイですわー……）
　肉体よりも精神にクるパンにＭＰをゼロにしながらも、レナさんは最後まで諦めずに走ります。

「ああ、もうっ！　モッチーのおかげで寝子高のレディ達の視線を釘つけにする作戦が台無しじゃないかっ！」
　八十八旗信彦くんは何の面白みもない、あずきパンを頬張りながら、隣を走る宇佐見望月くんに叫びます。
「ふははっ！　だから言ってるだろっ！　お前に姪っ子は渡さんっ！　って、うわこのパン、結構酒キツッ！？」
　望月くんはやはり微妙にかみあっていない会話を信彦くんと続けつつ、残った牛乳でパンを流し込みゴールを目指します。

「まさか、よりにもよって酒の入ったパンを引くなんて……」
　酒浸朱蘭さんはできるだけ匂いを嗅がないように細心の注意を払ってパンを持ち運びながら、己の不運を嘆いていました。
　というのも、朱蘭さんはとてもお酒に弱く、普通の人ならなんてことのないラムレーズンパンの匂いにもすっかり参ってしまう体質の持ち主だったのです。
（こうなったらゴール前で一気に食べてそのままゴールになだれこむしかないぜ……！）
　彼女は自分を信じて、最後の一基食いの瞬間に全てを賭けます。

　久良木優菜さんはもはや徒歩でした。
「はぁ、ふぅ……。飲食のし過ぎで、動くのが大変です」
　お腹を押さえながら、ゆっくりとゴールを目指して歩く優菜さん。
　彼女にとって、今回の競技は勝負に勝つことよりも、体育祭そのものを楽しむことが目的でした。
「学校生活というのは、こうも大変なものなのですね……」
　また一つ新たな経験をして、お嬢さまは人間的に成長を続けていくのです。

「ごちそうさまでした」
　巫部紫苑さんはコース上に座り込んで、牛乳と一緒に激辛カリーパンをゆっくりと完食していました。
「お、お粗末様だぜぇ……」
　よもや座り込んで食べる選手がいるとは思ってもいなかったか、サンマさんはやや呆然としながら完食した紫苑さんの言葉に応じます。
「さて、あとはゴールするだけですわね」
　紫苑さんは悠然と微笑むと、ゆっくりとした動きでゴールを目指して歩き始めました。
　と、そのとき。
「あら？」
　ちょうどグラウンドの反対側で、応援席からの溢れんばかりの歓声が聞こえてきました。
「あらあら。もう一位の方はゴールをしてしまったのですね……」
　特に順位に興味はない紫苑さんでしたが、一番盛り上がる瞬間に自分が蚊帳の外にいることに少しだけしょんぼり。
　と、そのとき。
「おねえちゃんファイトー」
「最後まで諦めないでー」
　応援席から名前も知らない人々の応援の声が紫苑さんに届きます。
「……っ」
　それに普段はあまり何事にも動じない性格の紫苑さんが少しだけ大きく目を見開いて、
「これは頑張らないわけにはいきませんね」
　と呟き、ゆっくりと最後の半周を走り始めるのでした。

　そして――。

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