コズミック焼きそばパンをこの手に！｜リアクション

コズミック焼きそばパンをこの手に！

　渡り廊下をとらえるカメラ・アイ。
　それが、急激に上昇する！
　直上。アルミ屋根の上にいたのは、信彦と利平。

　前回同様にしつらえられた、ショートカット用ロッカー。踏み台。鍵の開けられた窓。トランポリン。あん馬。平行棒。
　信彦の考えそうな侵入の手段。
　全てダミーだ。

　信彦の戦略はすでに名高かった。追随者も多く存在した。
　彼らを振り切るのではない。
　彼らをおびき寄せ、前回同様の策略を取ったものと一緒に、カウンターで一網打尽にする。

　窓は全て閉ざした。
　鍵を閉め、針金で固定した。まさに『嵌め殺し』。
　風紀委員を動員することで、動きを止めた。

　信彦によって沈黙の棺と化した寝子島。

「……ショートカットじゃなく、開いている経路を使うのか」利平はニヤリと笑う。「良いかもしれねぇ。前回、正攻法組はかなりバトルしてたからな」
　利平もバトルは嫌いではないが、今回も、信彦の策を活かすのが最善。
「前回の手がバレてるからな」
「カウンターアクション狙いだが、乗ってくる奴はいるかな？」どこか楽しそうに、信彦は笑う。
　自分と同じレベルの策士。それを下せば、彼の名誉はさらに大きくなる。

　屋根から二階に通じる窓は、出来る限り開いておいた。
　しかしそれも『自分と同程度の策士』がいるなら、安全策とは言えない。

（大丈夫だ）信彦はニヤリと笑う。（例えすべての経路がふさがれても、あそこは開いている……）

　神算鬼謀。恐るべき信彦のトラップネストだった。

　だが、その鉄壁の策に開いた、わずかな瑕瑾。
　
　神の目の小さな塵。

　慎重に、慎重を極めた信彦の一歩。
　しかしそれは、アルミの天井に響き渡り、足下の生徒たちに十分聞き取れる音を立てた。

　まして生徒たちは彼自身の策によって「静粛で」あったのだ。