走れ平助！｜リアクション

走れ平助！

「……黒子ちゃん。俺は今日、君に会えて、元気になったのが分かって、本当に嬉しかった」
　平助は言葉を切り、ぎこちなく微笑んだ。　
「けど、ごめん。俺は松子が」
　平助は、松子を抱き寄せた。
「世界中の誰よりも」
　平助の腕に、力がこもる。
「松子が好きなんだ！」

　静まり返った現場。
　最初に沈黙を破ったのは、黒子の異常とも言えるテンションの笑い声。
「黒子ちゃん……？」
「アハハハハ！　あー、笑える。勘違いすんなよ、平助？」
　つかつかと歩み寄り。黒子が、腕を振り上げた。

「俺は……同情なんかいらねぇ！！」
　乾いた音を立てて、平助の頬を張ると。黒子は“幸運”の文字が皮肉げに浮かぶ舌を突き出した。

　黒子が去り。
「なあ、『猫島軒』でラーメンでも食べていかないか？」
　寄り添う恋人を見やりながら、刀が提案し、皆はそれに従った。
「平助さんには、冷や冷やさせられましたよー。でも、あの二人……ずっと一緒にいられるといーですね！」
「また松子ちゃんを泣かせたら、俺、ヘースケ君を許せない」
「いい人過ぎるっていうのも、考え物なんだな……」
「……そう言えば、志波弟の方が、八十八旗を『アイツが兄なら、良いのに……な』って照れてたけど？」
　うそぶく天野に、武道はフォークでラーメンを掬う手を止めて、胸を押さえた。
「からかうのはよせ……拓郎がそんな事を言うはずが……」
　きっぱり否定したくとも、こればっかりは自信のないお兄ちゃんなのであった。
「さて、ご馳走様」
　どやどやと出て行く一行を、見送って。

「ミッション、コンプリート」
　黒トレンチコートの少年が、割り箸をぱちんと割った。

　平助は遅刻をしなくなった。
　どんなものよりも、松子の涙が彼の心を動かしたようだ。
　手を繋いだ恋人は、それから度々『うさぎ屋』を訪れるようになり、いいなはハート型のお好み焼きを作るのがうまくなった。

　そして後日、黒子は箪笥の角に小指をぶつけた。

終

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あとがき

担当マスター：メシータ
ファンレターはマスターページから！

　お疲れ様でした、メシータです。
　いやぁ皆さん、本当にフリーダムですね。
　フツウが守れれば良かったので、平助と松子が別れるエンディングも実は想定していました。
　とは言え、皆さんの奮闘もあり、結果はこのようになっております。
　少しでも、楽しんで頂ければ幸いです。

　このたびは、本シナリオへのご参加まことにありがとうございました。

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