焼きそばパンＤＸをこの手に！｜リアクション

焼きそばパンＤＸをこの手に！

　バシャーン！
　原液が盛大にぶちまけた！

　つるつるつるつるーーーっ！！

　派手にすっころぶ生徒たち。
　態勢をしっかり整えて走っていた刀や、手をつないでいた１０組グループはは多少バランスを崩した程度で持ち直す。
　だが、他の生徒たちは違った。洗剤に足を取られ、きりきり舞いする。
　突如、渡り廊下がジルバのダンス会場と化した。

　そこに追い打ちとばかり、先ほどに倍するトラップが飛来する！

　三回転トリプルアクセル。
　巧みなジャンプで罠を回避しつつ、環はほっとする。
　今回の戦いで、ろっこんは封じ手にしてあった。
　無用な事故を引き起こしかねないから……という理由だったが、このありさまで「他人を転ばせる」能力というのは危険すぎる。
　そう、何も危険なことをしたいわけじゃない。
「ハァンッッツ！！」自分を鼓舞するように、環は吼える。

　蛇那伊は自重でスリップを抑えつつ、さまざまな障害をなぎ倒す。
　凶悪化したトラップは粉砕し、事故を起こしそうな生徒は衝撃を抑えて制止させる。
　戦いの場にあって、仏の心を捨てきれぬ蛇那伊。
　それでも速度は緩めず、トップグループから外れることはない。

　派手に吹き飛ばされた十一は、ポケットから何かをまき散らす。
　植物の種。
　実家が農家を経営し、植物をこよなく愛する彼は、いつでも種を携帯している。
　自分を育ててくれた自然、今度は自分が育てる番！　と、心から自然を愛している彼。
「ちょっと、片づけ手伝えよー！」
　声もむなしく、ドカドカ走り去る生徒たち。おそらく悪辣な罠を仕掛けた連中だ。
　踏みにじられる種。
　十一の頭の中で、何かが弾けた。
「ふざけるな！　こんなめちゃくちゃにして……許さないからな！」
　十一の宣言とともに、割れた種が突如芽を吹きだす。
　淡い紫の花が、廊下に咲き乱れる。
　うねうねと伸びる蔦が、生徒たちを絡め取っていく。

　秋の七草、葛。
　知る人は、その花の美しさ、蔦の生命力もさることながら、実を擦って作る『くず粉』を思い浮かべるだろう。
　生成された澱粉は水に溶かすと半透明になり、とろみ、ぬめりを得る。
　ぬるぬるするのだ。
　
「うわー！」バラエティ番組の様に、ベタベタの液体まみれになって滑っていく信彦と利平。
　あっちこっちの凸凹に、ピンボールさながらぽんぽん弾かれる。
　大きく湾曲し、信彦と利平は校外にコースアウト。
　優勝候補とみなされていた二人、あっさりここでドロップアウト……。

　だが、誰が知ろう。
　これこそ信彦と利平の、想定していたコースだとは！