焼きそばパンＤＸをこの手に！｜リアクション

焼きそばパンＤＸをこの手に！

「何だ、これは……」
　修は愕然としていた。
　確認しておく。彼は今日の『焼きそばパンＤＸ』の存在を知らない。
　知らないまま、普通の焼きそばパンを購入しようと、購買部に向かおうとしていた。
　
　しかし、修を待ち受けていたのは、恐ろしい混雑。
　何か特別なものが、購買部で売られているのだろうか？
　ポケットに持参した焼きそばパンをねじ込み、彼も走り出す。
　
　彼の困惑は、渡り廊下で極限に達した。
　尋常でない出来事が、この学校で起きている！
　傍らで洗剤塗れで倒れている男子生徒に、修は声をかけようとかがみこむ……。

　その瞬間だった！
　罵声と怒号が背後からとどろいた！

　授業延長で後れを取った連中が、目の色を変えて突進してきたのだ！

「おい、一体何が……」
　ぐしゃ。
「一体……ぐっ！」
　ずし。
「何が……げふっ！」
　どす。
「なんで……べっ！」
　顔を上げて尋ねようとするたびに踏まれていく修。
　突撃部隊はあっさり洗剤葛湯地帯に踏み込んで、彼方へすっ飛んで行った。

　廊下に、死のような静けさが訪れた。

　ひらひらと張り紙が舞っている。
　渡り廊下は地獄と化していた。
　白濁した水溜りに、様々な遊具が散乱し、なぜか秋の草花が咲き誇っている。
　怪我こそないものの、焼きそばパンへの望みを絶たれた生徒たちがあちこちに蹲っていた。

　再び静けさの訪れた渡り廊下。
　もなかはなにかに誘われるように、そこへやってきた。

　ふと見れば、踏まれまくった少年。
　修という名は知らないが、ポケットからはみ出た焼きそばパンが彼女の目を射た。
（この人も、焼きそばパンを持っている……）

「誇り……」先ほどの少女が呟いた言葉が、胸によみがえる