焼きそばパンＤＸをこの手に！｜リアクション

焼きそばパンＤＸをこの手に！

　再び、チャイム時。
　大音響を立てて、窓から跳躍する巨大な影があった。
　尾鎌蛇那伊。普段は美しいものと、マッサージを愛する、ちょっと男子の筋肉が好きなだけの心優しい少年だが、今日は異様なオーラを発していた。
「今日の焼きそばパンＤＸ、取りにいくわ」蛇那伊の宣言を聞き、クラスメイトたちはどよめいた。
　蛇那伊の本気が、見られるかもしれない。
　見たい。……でも、真っ向対決するのは勘弁してほしい。
　彼のクラスは全員、今日は弁当かメシ抜きにしようと心に決めていた。

　ただ一人を除いては。

　八神修の今日の昼食は、焼きそばパンであった。
　偶然である。
　そういう厄介な偶然を引き当ててしまうところが、彼の星というものかもしれない。
　いろいろな焼きそばパンを食べ比べしてみよう、などとのんきなことを考えていた。

　だが、仮説・実証を愛する、どこまでも理知的な彼に似合わないズボラな間隙がその日の彼にはあった。
　このところ精力的に活動していた彼『焼きそばパンＤＸ』について、まったく情報を看過していたのだった。
　まさに、千慮の一失！

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