軟体これくしょん｜リアクション

軟体これくしょん

●大ハード・バージョンゼロ

　自転車で街中を走り抜けながら、修は一階がロビーになってるビルを探した。
　いくつか路地を駆け回って、丁度うってつけのビルを見つけると、美咲紀と二人で入口に園芸用ネットを仕掛け、
　真央の携帯に連絡を入れる。

「こっちの準備はできた。敵を誘導してくれ」

　修は後に残る美咲紀に武器や道具を手渡すと、自分は一足先にビルの上階へと走った。
　連絡を受けた真央は巨大タコに向かって石や落ちているものを投げつけながら、ジャージ上と白タオル振り回して気を惹き、修の指定した場所へと巨大タコを誘導する。

　しかし、誘導に夢中になっていた真央は、足元への注意がおろそかになり、足をもつれさせて転んでしまった。
　そこへ巨大タコの墨が浴びせられ、その酩酊作用で真央は前後不覚に陥ってしまう。

「修ちゃああん？　どっちへ行ったらいいのら～？」

　そのとき突如、轟音と共に水柱が湧きあがり、辺り一帯を水浸しにした。
　頭から大量の水を被った真央は、墨を流され頭も冷やし、はっと我に帰る。
　見れば追いついたねむるが、美咲紀と一緒に消火栓の水を振りまいていた。
　間一髪、近くまで伸びて来ていた触手をかわし、真央がビルの中へ転がり込む。
　良いところまで追いつめていた獲物を逃した巨大タコは怒り狂ってその後を追う。

　バサッ！

　そこへ修と美咲紀が仕掛けておいた罠が発動した。
　大きな園芸用ネットが頭上から巨大タコに覆い被さり、その動きを封じたのだ。
　次に手に包丁を持った真央がスパスパと動けなくなった巨大タコがネットを外そうともがく触手をぶった斬り、敵がひるんだ隙にねむるがネットを掴んで巨大タコの頭部に這いあがる。
　そして、ねむるはろっこん『In to the Sleep...』を発動する。
　それは触れた生物を眠らせるろっこん。効果を及ぼすには対象の額に触れなければならないのだが、タコの額とはいったいどこなのだろうか？　とりあえずは目の近くだと思われるのだが……迷っている暇はない。適当にそれらしい所をタッチし、ねむるは念じた。

　ぐらり……

　巨大タコの身体が二度三度大きく震えると、確かに目に見えてその動きが緩慢になってゆく。攻撃も曖昧なものになり、ふらふらとし始める。即座に眠らせることはできなかったものの、強い眠気を引き起こし、徐々に睡魔の奥へと引きずり込みつつあるようだ。
　ねむるは最後の望みをかけて巨大タコから飛び降り、叫んだ。

「八神くん、今だ！　やってくれ！」

　同時に修が二階から床をろっこん『分解』で粉々にする。地響きと共に轟音が巻き起こり、鉄筋コンクリートの床がバラバラになって、大きな塊が階下の巨大タコを襲う。周囲を土煙が覆い、何も見えなくなった――

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