軟体これくしょん｜リアクション

軟体これくしょん

●異次元バトルの始まり

「これはっ！？　食キング（しょっきんぐ）に対する挑戦なのだ。喰ってやるのだ。タコ待てなのだ～～！」

　部活帰りに寝子ヶ浜に通りがかった『空気の読めないノーブレーキ【ネコ派】』後木真央は、目にした巨大タコの見上げるばかりの巨体に圧倒されかけたが、そのすぐ傍に見知った友人たちの姿を見つけ、急いでその傍へ駆け寄った。

「おぉ、修ちゃんにねむるちゃんに美咲紀ちゃんなのだ～！　やっぱりタコ飯タコ焼き希望なのだ！？」

　こんな非常時であっても食欲を忘れない真央だったが、そういえば昼ごはんはまだだったかもしれない。
　この巨大ダコを料理すれば、さぞかしお腹いっぱいのタコ料理が食べられる事であろう。

「今日はやけに人気が少ないと思って外を眺めたら……何だかすごいことになってるね。
　なんとかしないと元の世界に戻れなそうだし、まず装備を整えよう」

　ひょいとバイト先の海の家から姿を現した『睡魔の申し子/称号：湧き上がる破壊衝動』日暮ねむるが一旦小屋の中にとって返し、役に立ちそうな道具……ペイントマーカー銃やアイスピック、水入りボトルを集めてバッグに詰め込み始めると、町へ向かう途中でこの事件に遭遇した『冷静沈着　／　称号：【猫鳴館専属軍師】』八神修は、こんな緊急事態にも慌てる事無く、周囲を見回して沈着冷静に状況を分析し始めた。

「チームを形成し、短期決戦のつもりでいくぞ。焦らず急いで確実にだ」

「浜辺ではタコの触手を防げないのです」

　ホームセンターからの帰り道に今回の事件に遭遇した『数学は苦手だけれど掛け算は得意』椿美咲紀が障害物の少ない付近の様子を見て告げると一同は顔を見合わせて頷き、各自乗ってきた自転車にまたがり、作戦実行のために各方面を目指す事にした。

「手伝って海の家でタコパーティなのだ」

　そう言いながら真央はジャージの上を脱いだ。ジャージの下には白いＴシャツを着込んでいる。
　白い色はタコをひきつけると聞いての作戦だ。
　いざという時のための着替え入り赤猫リュックは、邪魔にならない所に隠しておく念の入りようである。

「お前の相手は俺達だ」

　修が巨大タコにコップを投げつけて注意を引くと、町へと向けて走り出し、誘導を始める。

　キョエエエェェッッ！！

　修の挑発に巨大タコはその身を赤く染め、うねうねと触手を伸ばしてもれいび達に襲いかかる。

「俺は先行し交戦適地を探す。椿は一緒に。日暮、真央を頼む」

　美咲紀は頷くと、白いワンピースをひらりとひるがえして修に続いた。

「分かったのだ。修ちゃんやねむるちゃんたちの指示に従うのだ。スマホや大声で指示よろしくなのだ！」

　一行のしんがりについたねむるが、ペイント銃でタコの目元を狙って牽制射撃を行う。

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