【水泳大会】多分、生死を賭けた戦い（黒猫サイド）｜リアクション

【水泳大会】多分、生死を賭けた戦い（黒猫サイド）

【激突！　背泳！　まさかの、平行レース？】

　さて、運命のターンの結果。
　ターン直後にスパートをかける考えであったねむるが一気に速度を増し、駒鳥がそれに追従する形で順位を上げに行く。
（こう見えて適度には鍛えているからね）
　そう、心の中で思いつつ、ねむるはスピードを上げた。
　一方、修のペースは変わらずそのままであるが、真央がやや速度を上げ食らいつこうとする。
（真央ちゃんはエアコンより勝つのが重要なのだ！）
　勝ちにこだわる意地が、速度につながっているのだろうか。
（追いつけるかしらね……？）
　そう思いつつ、水姫は追い抜いていった集団を意識する。
ターン直後においていかれてしまったのだ。
　一応、スパートはかけるが体力自慢が泳ぐ中やや不利な感じがする。水泳部であり、体力はある方のはずだが、最初から全力で行っていれば現状の順位は違ったであろう。
　そう言う意味では、トップには食らいつかれたものの、最初から全力で行っていればまた違ったかもしれない。
　そして、煽が徐々に追い抜かれそうになっている。
（……まだ、やれる！）
　そう自分を鼓舞しつつ必死に全身を動かす。
　しかし、折り返してから……半分の地点で順位がついに変動する。
　がむしゃらな勢いで進んできた真央と、楽しいやら早く上がりたいやらである意味、負けん気が続いている駒鳥の二人がトップに立ったのだ。
　そのすぐ後ろ、まだ一位を狙える圏内に修、ねむる、水姫がほぼ一列に並んでいる。
　惜しいかな。煽は肺活量があっても、効率的に泳ぐすべは持たなかった。
　そして、順位は変わらず、ゴール手前へ……。
「ゴール！　2コースと3コースの計測係の人は、運営まで来てタイムを報告してください」
　円のアナウンスに、両組はざわつく。
　端から見ていて、真央と駒鳥は同着……しかし、タイムが計られているので、それで判定となったのだ。
　しばらくした後、円は結果を持ってマイクを握りしめる。
「コンマ数秒で、立井駒鳥選手の勝利です！」
　その瞬間、わっと白猫組から喝采が飛ぶ。
「ま、負けたのだ！　でも、いい勝負だったのだ！」
　プールサイドで真央は駒鳥に向かって話しかける。
「いい泳ぎだったのぅ。お互い良い勝負が出来て何よりじゃ」
　駒鳥もそう言ってがっつりと握手をした。

　……。

「あ、八神君残念だったね。でも、惜しかったよ！」
　修は、話しかけてきた人物を見て心が躍った。
　クラスメイトである七夜あおいである。
「あ、ありがとう」
　そう返したのもつかの間、あおいははっと何かを思い出したようにその場を離れる。
「ご、ごめん。ののこちゃん引っ張ってこないと。またね！」
　どうやら、どこかにばひゅーんと向かったののこを迎えに行くようだ。
　その途中で、修とすれ違いそうになったので、クラスメイトに残念だったねと優しい彼女なりの配慮であった。
「またな」
　修のその言葉が聞こえたかどうかは怪しかったが、短いがあおいからの励ましは修にとって嬉しいものだった。

　そして、競技は次へと進む。
「次は、バタフライ。選手の人は用意してください」
　円はそう言い終えると、マイクを次の人に回したのであった。