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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
慌てん坊なあの人が来る前に、「おめでとう」をあなたへ
繁華街へと向かう途中の住宅街ですら、夜道はクリスマスの装いで目を楽しませた。
思い思いに飾られた玄関先やカーポートの梁が星のような灯りを瞬かせているし、窓ガラス越しにも家々に異なる大小のツリーが通りへ見せるよう覗いている。煙突こそないけれど、あれならサンタクロースも迷子にならないだろうと笑い合うのに十分な煌めきが、この先にある大通りへの期待値を上げた。
どこか２人が繋ぐ手もそわそわと小さく揺れて、交差点を覗き込む。行き交う車のヘッドライトよりも目映い通りが目に飛び込んできて、思わず綾花は声を漏らした。
「わぁ……！」
シーサイドタウン駅を中心に、東西へ数百メートル続く光の道。寝子島街道の一部区間では、歩道脇や中央分離帯の区別なく、街路樹が色とりどりの電飾で彩られていた。
華やかな道の間には光るオブジェもあって、綾花の足は吸い込まれるように進んでいく。けれど珪は、綾花の手を強く引いてそれを止めた。
「信号、変わっちゃうよ？」
「え……あっ！ すみません、珪さん。ありがとうございます」
つい車が途切れたと油断してしまったが、綾花が歩行者の信号に目を向ける頃には点滅も終わっていた。
まだまだ子供っぽいところが抜けきらないなと反省しながら、改めて歩道の邪魔にならないところで足を止め駅方面を眺めてみる。
この近くはパステルピンクとホワイトが中心に飾られているけれど、数メートル毎に色は変わるらしい。
ちょうど寝子ヶ浜交番の通りから覗いたのが良かったようで、西の端からはブルーやパープル、ゴールドなど様々な色が見渡せた。
「写真、どこで撮ろうか迷っちゃいますね」
「そうだね。端から撮っていく？」
クスクスと笑って遠くまで眺めた珪は、トナカイを模したオブジェなども見つけて楽しんでいる。その顔を見てしまうと綾花もじっくり巡りたくなるけれど、ふと踏切を渡る人の流れが多いことに気付いた。
「海岸沿いも見てみませんか？」
平日だから海浜公園のイベントはやっていないはずだけど、既にライトアップは始まっているかもしれない。
信号待ちの間に街道をバックに写真を撮って、そのままタイミング良く踏切も越える。
すると、出迎えてくれたのは真っ暗で味気ない海だけではなかった。
「これは……」
「凄い……！ 珪さん、行ってみましょう」
雪の結晶が左右に流れる動きをする物から、細やかなステンドグラスのように描かれた物まで。海岸前の細い遊歩道では光のアーチが連なって、普段なら薄暗く人通りも少ない冬の小道が、今ばかりは明るく賑やかだ。
ひとつ、ふたつと潜っては見上げを繰り返す。街道の迫力とはまた違って、光の回廊は厳かな雰囲気さえ感じさせるから、綾花はアーチの中に素敵なモチーフはないかと探した。
もちろん赤いリボンもいい、ポインセチアだって悪くない。でもやっぱり、気になる言い伝えはヤドリギだ。
――ヤドリギの下でキスをすると永遠に結ばれる。
ちらりと珪を盗み見て、叶えてくれるかなと心の中で問いかけてみる。
クリスマスシーズンには飾られることが多いから、見つけることは出来るだろうけれど……気付いてくれるだろうか。
じっと熱視線を送っていれば、珪も気付いて微笑み返す。
「今日こんな素敵な物を見ちゃったら、クリスマスはどこに行こうか」
去年までは彼の生徒だったけれど、過ごした時間に不満があったわけじゃない。
楽しかったし、嬉しかった。……ちょっと背伸びをしたことも、苦いとは思っても後悔したわけじゃない。
でも今年は、恋人として迎えられる。確かに彼の特別な愛情を受けて隣に居られる。
「……少しだけ、我が儘を言ってもいいですか？」
腕に抱きついて、内緒話をするように顔を寄せて。珪の様子を窺う綾花は、ヤドリギのことを素直に口に出しかけたけど――叶えて欲しいからこそ、止めた。
「やっぱり、秘密です。効果が無くなっちゃうのは嫌ですから」
ふふっと意味深に笑う綾花は、アーチに描かれたデザインを口々に挙げて場を誤魔化す。あれは天使、こっちはベル。ヒイラギにキャンディケインとクリスマスに関する物ばかりだ。
「効果ってことは、綾花さんの我が儘は何かのおまじない？」
もう少しヒントをと食い下がる珪に、どうしようかなぁと思案顔を見せて、綾花は次のアーチに目を向ける。
そこにはクリスマスリースが描かれていたから、綾花はクスクス笑って指さした。
「珪さん、ヒントがあるかもしれませんよ。ええと、モミの葉っぱと柊の実と、白いのはヤドリギかな？」
何だと思いますかと尋ねるフリをして、何かに気付くかなと期待して。
真剣に見つめ考える珪の姿を眺めながら、綾花は特別な日になりますようにと静かに願った。
思い思いに飾られた玄関先やカーポートの梁が星のような灯りを瞬かせているし、窓ガラス越しにも家々に異なる大小のツリーが通りへ見せるよう覗いている。煙突こそないけれど、あれならサンタクロースも迷子にならないだろうと笑い合うのに十分な煌めきが、この先にある大通りへの期待値を上げた。
どこか２人が繋ぐ手もそわそわと小さく揺れて、交差点を覗き込む。行き交う車のヘッドライトよりも目映い通りが目に飛び込んできて、思わず綾花は声を漏らした。
「わぁ……！」
シーサイドタウン駅を中心に、東西へ数百メートル続く光の道。寝子島街道の一部区間では、歩道脇や中央分離帯の区別なく、街路樹が色とりどりの電飾で彩られていた。
華やかな道の間には光るオブジェもあって、綾花の足は吸い込まれるように進んでいく。けれど珪は、綾花の手を強く引いてそれを止めた。
「信号、変わっちゃうよ？」
「え……あっ！ すみません、珪さん。ありがとうございます」
つい車が途切れたと油断してしまったが、綾花が歩行者の信号に目を向ける頃には点滅も終わっていた。
まだまだ子供っぽいところが抜けきらないなと反省しながら、改めて歩道の邪魔にならないところで足を止め駅方面を眺めてみる。
この近くはパステルピンクとホワイトが中心に飾られているけれど、数メートル毎に色は変わるらしい。
ちょうど寝子ヶ浜交番の通りから覗いたのが良かったようで、西の端からはブルーやパープル、ゴールドなど様々な色が見渡せた。
「写真、どこで撮ろうか迷っちゃいますね」
「そうだね。端から撮っていく？」
クスクスと笑って遠くまで眺めた珪は、トナカイを模したオブジェなども見つけて楽しんでいる。その顔を見てしまうと綾花もじっくり巡りたくなるけれど、ふと踏切を渡る人の流れが多いことに気付いた。
「海岸沿いも見てみませんか？」
平日だから海浜公園のイベントはやっていないはずだけど、既にライトアップは始まっているかもしれない。
信号待ちの間に街道をバックに写真を撮って、そのままタイミング良く踏切も越える。
すると、出迎えてくれたのは真っ暗で味気ない海だけではなかった。
「これは……」
「凄い……！ 珪さん、行ってみましょう」
雪の結晶が左右に流れる動きをする物から、細やかなステンドグラスのように描かれた物まで。海岸前の細い遊歩道では光のアーチが連なって、普段なら薄暗く人通りも少ない冬の小道が、今ばかりは明るく賑やかだ。
ひとつ、ふたつと潜っては見上げを繰り返す。街道の迫力とはまた違って、光の回廊は厳かな雰囲気さえ感じさせるから、綾花はアーチの中に素敵なモチーフはないかと探した。
もちろん赤いリボンもいい、ポインセチアだって悪くない。でもやっぱり、気になる言い伝えはヤドリギだ。
――ヤドリギの下でキスをすると永遠に結ばれる。
ちらりと珪を盗み見て、叶えてくれるかなと心の中で問いかけてみる。
クリスマスシーズンには飾られることが多いから、見つけることは出来るだろうけれど……気付いてくれるだろうか。
じっと熱視線を送っていれば、珪も気付いて微笑み返す。
「今日こんな素敵な物を見ちゃったら、クリスマスはどこに行こうか」
去年までは彼の生徒だったけれど、過ごした時間に不満があったわけじゃない。
楽しかったし、嬉しかった。……ちょっと背伸びをしたことも、苦いとは思っても後悔したわけじゃない。
でも今年は、恋人として迎えられる。確かに彼の特別な愛情を受けて隣に居られる。
「……少しだけ、我が儘を言ってもいいですか？」
腕に抱きついて、内緒話をするように顔を寄せて。珪の様子を窺う綾花は、ヤドリギのことを素直に口に出しかけたけど――叶えて欲しいからこそ、止めた。
「やっぱり、秘密です。効果が無くなっちゃうのは嫌ですから」
ふふっと意味深に笑う綾花は、アーチに描かれたデザインを口々に挙げて場を誤魔化す。あれは天使、こっちはベル。ヒイラギにキャンディケインとクリスマスに関する物ばかりだ。
「効果ってことは、綾花さんの我が儘は何かのおまじない？」
もう少しヒントをと食い下がる珪に、どうしようかなぁと思案顔を見せて、綾花は次のアーチに目を向ける。
そこにはクリスマスリースが描かれていたから、綾花はクスクス笑って指さした。
「珪さん、ヒントがあるかもしれませんよ。ええと、モミの葉っぱと柊の実と、白いのはヤドリギかな？」
何だと思いますかと尋ねるフリをして、何かに気付くかなと期待して。
真剣に見つめ考える珪の姿を眺めながら、綾花は特別な日になりますようにと静かに願った。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2025年11月27日
- 参加申し込みの期限
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- 2025年12月04日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2025年12月04日 11時00分
