紅燃ゆる渓谷美｜リアクション

紅燃ゆる渓谷美

　有沢茉奈は九夜山の渓谷に続くロープウエイの乗り場の前で、深呼吸をした。真っ青な空と色づいた落ち葉が舞っている。
（あー気持ちいい）
　来年は大学受験だ。本番まで四か月程度。今が追い込みだが、勉強し過ぎてはテンパってしまうので、適度は休みは必要だ。こうして、息抜きも必要だろう。
「受験が終わったら、何しよ」
「とりえず、卒業旅行とかか？」
「！」
　つい口から出た言葉に答えが返ってきて驚くと、笑顔の閑野カノンが立っていた。
「カノン」
「どうだ、勉強の方は」
　今日息抜きのデートに付き合ってくれる優しい恋人だ。
「うん、まあ。詰め過ぎると良くないから」
「ああ、そうだな。じゃあ、ロープウエイのチケットを」
「あ、その前に寝子島神社に行っても良い？」
「ん？　何かあるのか？」
　茉奈は片目を閉じて見せる。
「早いもの勝ちじゃない？　受験の合格祈願」
「そういうものか？」
　苦笑気味のカノンを連れて、神社へいくことにした。

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