寝子島ラーメン戦争｜リアクション

寝子島ラーメン戦争

　昼時。
　今日の水守流はラーメン腹、それは間違いない。
　しかし。
（この多数のラーメン屋の中でどれが今日の俺にとっての正解になるか……店が増えた事での贅沢な悩みってやつだな）
　まず悩むのは、馴染みの店にするか、新規開拓か、だろう。
　迷いに迷って結局、『手打ち麺嵐』という店に決めた。
　猫島ラーメンのニューウェーブだ。知っていたが、まだ食べた事はない。
「いらっしゃいませー」
　意を決して店内へ入ると、ラーメン屋らしく少し大きめの声をかけられた。
「お好きな席へどうぞー」
　席についてからメニューを眺める。
（まぁ、目移りしそうではあるが……初見の店では一番人気の看板メニューでいくのが俺のやり方！）
　と、言うわけで、
「鳥白湯ラーメン一つおねげーしやす！」
　そして、待つこと数分。
「お待たせしましたー」
　目の前に置かれるラーメンどんぶり、そこにはあまり見慣れない光景が広がっていた。
「お……おおっ」
　白いスープ、点々と赤いソースのような物がスープに浮かんでいる。麺の上には赤身がかった柔らかそうなステーキ、切り方は薄めでローストビーフのようだが、赤ワイン入りのソースがかかっている。
　フレンチのような１品と口コミで書かれていたのも納得の、見た目の美しさだ。
「よーし、さっそく」
　白いスープに箸を沈めると、少し濃厚なことが分かった。赤いソースを混ぜながら麺を掴み、引き上げる。
「すげ、カフェアートみたいになるじゃん」
　赤と白が綺麗だ。
「そいじゃずずっといただきます」
　豪快に音を立てて、勢いよくすする。
「んー！！」
（盛り付けと同じように味も結構上品だ
。だがけして気取った上品さではない、しっかりラーメンとしての上品さってーの？　そういうのを感じるぜ）
　次にステーキと合わせて麺をすする。
「こ、これは」
　赤ワインソース、スープが麺と肉に絡んで、４重に味がする。
「４種類、これだけ混ざってるのに……全部調和してる、だと」
「おっと、よく分かってるじゃないか」
　店員がテーブルの前に立ってにやりと笑う。
「複数の味が絡み合って出る深みに気づけるとはやるな」
「へへ、それほどでも」
　店員はテーブルに皿を置いた。
「こっちもお待たせしました。ゆっくり味わえよ」
「ありっす！」
　皿に乗っているのはスープに入れてチーズリゾット風にできるおにぎりだ。頼んでおいて正解だった。麺完食だけでは満足出来ないかもしれなかった。
「〆まで堪能しないとだな！」
　リゾットの味はというと、とにかく絶品だった。元々味付きおにぎりなのか、５種の味わいがあるチーズリゾットに早変わり。
　満足のいく昼食タイムだった。

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