まとめてハッピーバースデー♪　４月から６月まで☆｜リアクション

まとめてハッピーバースデー♪　４月から６月まで☆

　その日、倉前七瀬はシーサイドタウンをふらふらと散歩していました。
　そしてとある店で看板を見つけ、立ち止まりました。
「手作り体験教室？」
　なんだか惹かれるものがありました。
（値段はまあまあですね。ちょっと見てみましょうか）　

　覗いてみると、テーブルに綺麗な砂時計が並んでいました。
　どうやら雑貨屋のようで、店内にはあまり人がいませんでした。
「いらっしゃいませ。砂時計を作ってみませんか？」
　お店の人が声をかけてくれました。
「ふむふむ、砂時計の手作り体験ができる、と」
　見れば様々な色の砂があり、台座にデコレーションもあります。
「選んで配置するだけですから簡単ですよ」
　考えている七瀬にお店の人は言いました。
「砂時計はプレゼントにもいいですよ。砂時計を贈る意味は――」
　その説明が決め手になりました。

「ふむん、それなら体験したいです」
　七瀬は頷き、財布を取り出しました。
（ウォルターさんの誕生日プレゼント、作ります)

「しかしこれだけパーツがあると、悩みますね」
　まずは時間。５分まで作れると説明されました。
「うーん、短すぎるのも長すぎるのもなんですし、３分にしましょうか」
　そしてさまざまな砂の色から一色を選びます。
「どれも綺麗ですけど……」
　悩んで悩んで、七瀬はエメラルドグリーンを選びました。
（エメラルドには幸運や幸福を願う意味があるとどこかで読みました）
　さらに悩ましいのが台座。
（機能だけのシンプルなものでなく、見ていて飽きない癒されるようなデザインが欲しいところです）
　既成のパーツを組み合わせることもできると聞いて、オリジナルのものを作ることにしました。

「よし……完成です！」
　台座部分に２匹の猫がおり、砂が落ちるのを仲良くじっと見つめています。
　猫のパーツは、自分とウォルターを意識したものです。
（毛色と目の色が似てる気がします。ウチとしては、結構上手にできた気がしますけど……）

「……と、いう経緯でできた砂時計がこちらです」
　説明を終えて、七瀬はカフェで向かいに座ったウォルター・Bに砂時計の箱を差し出しました。
「ウォルターさん、お誕生日おめでとうございます」
（喜んでくれますかねぇ）
　ドキドキしながら見つめれば。
「すごいねぇ、上手にできてるよぉ。ありがとう」
　ウォルターは目を輝かせて砂時計を取り出し、逆さにしました。
　さらさらとエメラルドグリーンの砂が落ち始めます。
　それを見つめていたウォルターの視線が、七瀬を捕らえました。
「そういえば、砂時計を贈る意味って何だったのかなぁ？」
　
「そうそう、砂時計を贈る意味は……『これからも一緒にいたい』だそうです」
　照れが出ないように、さりげなく七瀬は答えました。
「ウォルターさん、これからも仲良くしてくださいね」
「こちらこそ」
　ウォルターは、さらさら落ちる砂のように静かに笑むのでした。