まとめてハッピーバースデー♪　４月から６月まで☆｜リアクション

まとめてハッピーバースデー♪　４月から６月まで☆

　月原想花は、４月３０日生まれで、１７歳になります。
　今日は黒白滴と一緒に寝子島をスケッチしに出かけました。
（スケッチしに、というか……デートしに……というか）
　想い人の滴は４月９日生まれ。
（だから少しだけ滴さんのほうがぼくよりお姉さん、になる）
　１７歳になったからといって特別な感慨はないのですが、想花は滴へのプレゼントを用意してきていました。　

「ここにしようか～」
　滴の言葉に頷き、想花は草の上に座りました。
　美しい草花をスケッチしながら、滴の横顔と絵に時々目をやります。
（滴さん、こんな絵を描けるんだ）
　今まではモノクロの鉛筆画ばかり描いていた滴が、最近は水彩絵の具や色鉛筆、クレヨンなんかで絵を描いているのでした。
　外見は変わらないように見えても、確実に内面は変化しているのでしょう。

（外見、といえば）
　季節はそろそろ初夏。気温も上がって少し汗ばんできました。
（髪も、少し長くなってきたのでそろそろ切りに行こうかな）
　ベリーショートにしている髪は、最初はあんなに落ち着かなかったのに今はそんな風に思えます。
（これもまた変化なのかな）

　そんなことを考えていると、スマホの通知音がしました。
（ニャインだ）
　確認すると、読モをしているティーン雑誌『17ans』の今度の撮影の打ち合わせの件でした。
（とりあえず既読して放置、っと）
　滴のほうを見ると、こちらを気にする様子もなくスケッチに没頭しているようでした。
　想花もまた、スケッチに戻りました。

「……できたよ～」
「ぼくも、これで一段落……」
　そう言った時。
　きゅるる……
　小さくお腹の音がして、想花は顔を赤らめました。
「お腹、すいたね～」
　微笑んで滴が言い。
　時計を見ると、お昼を過ぎていました。
「ごはん食べに行こうか」

　二人は適当な喫茶店に入って、軽食を注文しました。
「滴さん、あのね……」
（なんだかドキドキするな……）
　想花は誕生日プレゼントを取り出しました。
「お誕生日、おめでとう」
　それは100色の水彩絵の具セットでした。
　滴のお気に入りの絵の具メーカーのもので、想花にとっては結構お高いものでした。
「最近水彩画を描き始めたみたいだから……気に入ってもらえると嬉しいな」

「ありがとう、嬉しい……これは私からだよ～」
　にっこり微笑んだ滴も、プレゼントを取り出しました。
「お誕生日、おめでとう」
「ありがとう……」

　心臓の鼓動が聞こえそうでした。
「開けてもいい？」
「もちろん」
　重い包みを開くと。
「……ニャド戦記！？」
　それは有名ファンタジー小説の愛蔵版でした。
　豪華な装丁で、美麗な挿絵もたくさん入っています。
「想花ちゃん本が好きだから……好みに合った？」
「ありがとう……うん、すごく嬉しい」
　すぐにも読み始めたくなりながら、想花は滴にお礼を言うのでした。