まとめてハッピーバースデー♪　４月から６月まで☆｜リアクション

まとめてハッピーバースデー♪　４月から６月まで☆

　東大生になった八神修は、金曜授業後すぐ寝子島に来て、週末を迎えていました。
　いい天気で、暑すぎず寒すぎない穏やかな気候でした。

（懐かしい……とまではいかないか。先月まで見慣れた景色だものな。その角から今にもあおいが現れそうな気がする）
　そんなことを思いながら歩いていると。
「あれ？　修くん！」
　現れたのは、バスケットを提げた野々ののこでした。
「野々、元気そうだな」
　あおいではないとはいえ、修は友人に会えて笑顔になりました。

「野々はどこか行くところだったの？」
「ちょっと散歩ついでにお昼でも買おうかなって。修くんは？」　
「俺は不動産屋帰りだ。寮出ちゃったろ？　だからどこか借りようかと」
　検討資料に貰ってきてた物件案内の紙束を見せながら言うと、
「えっ？　まだ住むところ決まってなかったの？　……あ、修くん今本土にいるんだよね？」
　寮を出た修が家無し状態なのかと驚いた様子のののこですが、修が寝子島を出たのを思い出したようです。
「ああ、東京に家はあるよ。週末を寝子島でと考えてるんだ。東京からなら近いしさ。空気の綺麗な緑の中で住みたいってのもある」
「へー」

　その時、修の耳に何かが聞こえた気がしました。
『寝子島に居ないとシナリオに参加し難いの。だから自然な形で島に居るためにも拠点が要るんだよぅ』
（えっ？　今の声、誰？）
　周囲を見回しましたがののこのほかには誰もおらず。
（神魂の影響？　……いや、疲れているのかな）
　修は忘れることにしました。
　
　そしてののこに尋ねます。
「野々的にはニュースとかある？　家はどこになった？」
　もしまだ決まってないなら、貰ってきた物件案内が役に立つかもしれないと思いながら。
「あ、家はこの近くのアパート。ボロだけど家賃安いんだよね。ニュースは……もうすぐ１９歳になることかな？」
　ののこの答えに、修は嬉しそうに言いました。
「誕生日が近いのか。おめでとう！　何かプレゼントしたいな。そうだ、どこか行かないか？」
「え？　いいの？」
「ああ、植物園でも動物園でも寿司持ち帰りでもサイクリングでも。野々の希望を行先にしよう。支払いが誕生日プレゼントだ」
「どうしようかなー」

「ニャー」
　その時、猫の鳴き声がして修が振り返ると。
「テオ！」
　灰色の猫テオドロス・バルツァがそこにいたのでした。
「テオも一緒に……あれ？」
「どうかした？」
　修の様子に、ののこが尋ねます。
「なんとなくテオのことも祝いたい気持ちになったんだ。不思議だな」
「そう？　まあいいか。あのね、行ってみたい場所思いついたよ」
「どこ？」
「木天蓼大学のキャンパス。一人じゃ気後れしちゃうけど、修君ならどう見ても大学生に見えるから堂々と入れるでしょ？」
　ののこの目がきらきらと輝いていました。
「なるほど」
　堂々としていれば自然に入ることができるでしょう。
　守衛の目を盗めばテオも入れるだろうか、学食は猫連れでは無理でもピクニックのように外でなら……と考えて、修はわくわくしてきました。

「行こう。テオにも食べ物を買って祝ってあげたい」
「ニャー」
　テオは仏頂面のまま、それでもののこと修についていくのでした。

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