待ちに待ってた、海開き♪｜リアクション

待ちに待ってた、海開き♪

◆娘と海の眩しさ

　海開きの日。
　梓智依子は寝子島高校の同級生たち、そして娘の梓楓と一緒に海に来ていた。

（今日は休みにできて本当に良かった）

　ここ最近は期末テストに加えてバイトへの復帰もあり、かなり忙しかった。
　そのため、なかなか楓にかまってあげられなかったことが心に引っかかっていた。だから今日はどうにかバイトのシフトを交代してもらい、なんとか休みを確保した。
　水着に着替えるために更衣室へ全員で移動したが、楓の着替えを手伝うため同級生たちには先に行ってもらった。彼女たちを見送る間も楓は嬉しそうにはしゃいでいる。気持ちはわかるものの、なかなか着替えが進まない。
　どうにか水着に着替えて外に出ると、同級生たちがこちらに手を振った。

「かわいい～」
「すっごい美人」

　楓や智依子への言葉がなんだかくすぐったい。
　準備運動をして、いざ海へ。楓が真っ先に駆け出し、同級生たちが続く。波打ち際で彼女たちと戯れる楓をスマホで何枚も撮影する。

（でも、どんなに撮影しても楓の持つ眩しさを切り取ることなんてできないわ）

　それでも撮影する手を止めることは無かった。
　ひとしきり遊んだところで休憩を挟む。智依子は楓の様子を見ながら水分補給を促す。周囲を見ると海開きに合わせて様々な催しが行われていた。そのなかで目を惹いたのが『NEKOGAHAMA BEACH FES』だ。
　音楽とダンスのパフォーマンスイベントで、ノリの良いリズムに合わせてステージで踊っている。観客たちもノリノリだ。

（活気があっていいわね）

　会場に近づいて同級生たちと眺める。楓も自然と体が動いていた。するとスタッフから飛び入り参加の勧誘を受ける。

「いえ、私は……」

　最初は断るつもりだったが同級生たちに囃し立てられて楓とともに参加することに。
　飛び入り参加なので流れている曲も詳しくない。だけど彼女は周期的なリズムのなかでどう踊ろうか考えていた。楓も体を揺らしながらステージに上がるのを待っている。
　名前を呼ばれてステージに飛び出すと体は自然と動き出した。ぶっつけ本番なので親子で振付は違ったが、観客は気にしていなかった。美しくも躍動的な智依子。幼いながらもメリハリのある動きを見せる楓。そこに音楽の力も重なって会場は大いに盛り上がった。
　パフォーマンスを終えたとき、観客から盛大な拍手があがった。

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