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- 種族
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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
七月、世界が終わるなら
さよなら未来
あと三日で地球が滅びると聞いたとき、梓 智依子の脳裏をよぎったのは、まだ五才の娘、楓のことだった。
「ママ？」
愕然として立ち尽くす智依子の脚にすがるようにして、楓は母を見上げてくる。
何が起ころうとしているのか、はっきりとはわからないなりに、母がショックを受けていることはわかったらしい。
「ちきゅうさいごのひってなあに？」
無邪気に聞いてくる娘に、なんと答えるべきか考えあぐねた挙句、智依子は膝を折って幼い娘と視線を合わせた。
「なんでもないよ。ダンスの練習、しよっか」
「うん！」
……言えなかった。
もう、地球は終わっちゃうんだよ。
地球が終わるってことは、私たちがみんな死んじゃうってことだよ。
未来なんかなんにもなくなって、抱いていた夢が叶う日は来ないんだよ。
なんて――ダンスの練習が楽しくて、自分と同じようにいつかはダンサーになると夢見ている五才の娘に、言えるはずがない。
姿見の前で一生懸命に踊る娘のためにできることは、いつも通りダンスの練習に付き合うことだけだ。
それからの三日間、智依子はテレビをつけるのをやめた。テレビではひっきりなしに世界の終わりについて放送していて、それを娘に見せたくなかったからだ。人とも出来るだけ会わないようにした。みんな不安で、世界の終わりについて話さずにはいられなかったから。
智依子がしたことは、できるだけいつも通りに過ごして、普段と変わらぬ練習メニューをこなすこと。
「ママ、みてー！ いまのターン、どうだった！？」
「いいわね、すごく上手になったわ。その調子よ」
それはお世辞でもなんでもなかった。
楓は筋がいい。練習のたびに右肩あがりに上手くなっていく。
そう思うのは親のひいき目だろうか、と自問する。
いや。かつて天才ダンサーと言われた『ChiCo』の目でみても筋はいい。
間違いがないと言いきるのは気が引けるが、かなりいい線をいっているはずだ。
だからこそ――哀しみはより深くなる。
「えへへっ、ママにほめられた！ かえで、もっとがんばるんだ。ダンサーになって、ママといっしょにいっぱいおどるの！」
「楓……」
こみ上げる涙を堪えて、智依子は微笑む。
「うん。そうね。楓ならぜったいにすてきなダンサーになれる。ママの目に狂いはないんだから」
おねがい。
気がつかないで。
泣いてしまいそうなこと。
これからも楓の成長を見守っていたい。
ダンサーとしてスポットライトを浴びる日をこの目でみたい。
なのにもう……その夢が叶うことはないのだ……。
練習に夢中な楓に背を向けて、智依子はそっと涙を拭った。
「ママ、じょうずにできたから、アイスたべたい！」
「いいわよ」
振り向いた智依子は、いつもどおりのママの顔をしていた。
「やったー！ かえでね、水色のソーダのアイスがいいの。まんなかでふたつにわれるやつ！ はんぶんはママにあげるね！」
「いいの？ 楓がぜんぶ食べてもいいのよ？」
「ううんっ、はんぶんこがいいの！ だってかえで、ママだーいすきだもん！」
楓がぎゅっと抱きついてくる。
幼い身体にいっぱいつまったエネルギーと愛情を、智依子にまるごとぶつけてくれる。
それがあまりにも愛おしくて……悲しくてたまらない。
「ママ！ アイスはんぶんあげるから、ばんごはんはハンバーグにして！」
「はいはい」
楓の頭を撫でて、智依子はやさしい嘘をつく。
晩御飯の用意はしていない。晩御飯はもうないって知っているから。
それとも……ほんとうは、世界は終わったりしないのかしら。
（そうだったら、笑うわね。笑って笑って、よかったね、って買い物に行くわ。そうだわ、ひき肉と玉ねぎを買わなくちゃ。ハンバーグを作るんだもの）
ハンバーグのことを考えながら、智依子はそっと娘を抱きしめる。
「ママ？」
――世界が、終わる。
＜了＞
あと三日で地球が滅びると聞いたとき、梓 智依子の脳裏をよぎったのは、まだ五才の娘、楓のことだった。
「ママ？」
愕然として立ち尽くす智依子の脚にすがるようにして、楓は母を見上げてくる。
何が起ころうとしているのか、はっきりとはわからないなりに、母がショックを受けていることはわかったらしい。
「ちきゅうさいごのひってなあに？」
無邪気に聞いてくる娘に、なんと答えるべきか考えあぐねた挙句、智依子は膝を折って幼い娘と視線を合わせた。
「なんでもないよ。ダンスの練習、しよっか」
「うん！」
……言えなかった。
もう、地球は終わっちゃうんだよ。
地球が終わるってことは、私たちがみんな死んじゃうってことだよ。
未来なんかなんにもなくなって、抱いていた夢が叶う日は来ないんだよ。
なんて――ダンスの練習が楽しくて、自分と同じようにいつかはダンサーになると夢見ている五才の娘に、言えるはずがない。
姿見の前で一生懸命に踊る娘のためにできることは、いつも通りダンスの練習に付き合うことだけだ。
それからの三日間、智依子はテレビをつけるのをやめた。テレビではひっきりなしに世界の終わりについて放送していて、それを娘に見せたくなかったからだ。人とも出来るだけ会わないようにした。みんな不安で、世界の終わりについて話さずにはいられなかったから。
智依子がしたことは、できるだけいつも通りに過ごして、普段と変わらぬ練習メニューをこなすこと。
「ママ、みてー！ いまのターン、どうだった！？」
「いいわね、すごく上手になったわ。その調子よ」
それはお世辞でもなんでもなかった。
楓は筋がいい。練習のたびに右肩あがりに上手くなっていく。
そう思うのは親のひいき目だろうか、と自問する。
いや。かつて天才ダンサーと言われた『ChiCo』の目でみても筋はいい。
間違いがないと言いきるのは気が引けるが、かなりいい線をいっているはずだ。
だからこそ――哀しみはより深くなる。
「えへへっ、ママにほめられた！ かえで、もっとがんばるんだ。ダンサーになって、ママといっしょにいっぱいおどるの！」
「楓……」
こみ上げる涙を堪えて、智依子は微笑む。
「うん。そうね。楓ならぜったいにすてきなダンサーになれる。ママの目に狂いはないんだから」
おねがい。
気がつかないで。
泣いてしまいそうなこと。
これからも楓の成長を見守っていたい。
ダンサーとしてスポットライトを浴びる日をこの目でみたい。
なのにもう……その夢が叶うことはないのだ……。
練習に夢中な楓に背を向けて、智依子はそっと涙を拭った。
「ママ、じょうずにできたから、アイスたべたい！」
「いいわよ」
振り向いた智依子は、いつもどおりのママの顔をしていた。
「やったー！ かえでね、水色のソーダのアイスがいいの。まんなかでふたつにわれるやつ！ はんぶんはママにあげるね！」
「いいの？ 楓がぜんぶ食べてもいいのよ？」
「ううんっ、はんぶんこがいいの！ だってかえで、ママだーいすきだもん！」
楓がぎゅっと抱きついてくる。
幼い身体にいっぱいつまったエネルギーと愛情を、智依子にまるごとぶつけてくれる。
それがあまりにも愛おしくて……悲しくてたまらない。
「ママ！ アイスはんぶんあげるから、ばんごはんはハンバーグにして！」
「はいはい」
楓の頭を撫でて、智依子はやさしい嘘をつく。
晩御飯の用意はしていない。晩御飯はもうないって知っているから。
それとも……ほんとうは、世界は終わったりしないのかしら。
（そうだったら、笑うわね。笑って笑って、よかったね、って買い物に行くわ。そうだわ、ひき肉と玉ねぎを買わなくちゃ。ハンバーグを作るんだもの）
ハンバーグのことを考えながら、智依子はそっと娘を抱きしめる。
「ママ？」
――世界が、終わる。
あとがき
担当マスター：
笈地 行
ファンレターはマスターページから！
ご参加ありがとうございました。笈地です。
乗り越え、ましたね……？ ですよね？
こうして無事にリアクションをお届けできてヨカッタです！
はじめましての人が集まったときとか、自己紹介のネタで
「もしも世界が終わるなら何する？」「もしも人生最後の日なら何食べる？」
なんて喋ったりすることがあります。
わたしはなぜか最後はフレッシュなグレープフルーツジュースを飲みたい、という願望があったりします。
ふだんはお酒大好きなのに、
なぜ最後はグレープフルーツジュースと思うのか自分でも全く理解できませんが
こういう質問ってなんとなくそれぞれのキャラクターが出ますよね～
そんなわけで楽しく書かせていただきました！
それではまた別のシナリオでお会いしましょう。
笈地でした。
乗り越え、ましたね……？ ですよね？
こうして無事にリアクションをお届けできてヨカッタです！
はじめましての人が集まったときとか、自己紹介のネタで
「もしも世界が終わるなら何する？」「もしも人生最後の日なら何食べる？」
なんて喋ったりすることがあります。
わたしはなぜか最後はフレッシュなグレープフルーツジュースを飲みたい、という願望があったりします。
ふだんはお酒大好きなのに、
なぜ最後はグレープフルーツジュースと思うのか自分でも全く理解できませんが
こういう質問ってなんとなくそれぞれのキャラクターが出ますよね～
そんなわけで楽しく書かせていただきました！
それではまた別のシナリオでお会いしましょう。
笈地でした。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2025年06月26日
- 参加申し込みの期限
-
- 2025年07月03日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2025年07月03日 11時00分
