仲良くなりたい、その13 ＜オーバータイム特別版＞｜リアクション

仲良くなりたい、その13 ＜オーバータイム特別版＞

　朝鳥さゆるは、大学生にしてキャバクラ『プロムナード』で勤務するキャバ嬢でもある。
　今日は同僚兼恋人の姫木じゅんが開店早々に指名され、さゆるはバックヤードで指名待ちをしていた。
　二十歳まではお酒は飲まないようにとの店主からのお達しもあり早い時間からは指名されにくいので、こういう状況がままある。

「どう、さゆみ？　仕事は慣れた？」　
　声をかけてきたのは、明るい茶色髪を巻き下ろした先輩、沙央莉。
　この店に入るとき面接をしてくれた人気キャバ嬢だ。
「はい……お客さんもお店のみんなもいい人ばかりで、なんとか」　
「あんたの顔面ならそりゃ人気も出るわよね。でもこれからよ。客なんて飽きっぽいもんだから」　
　沙央莉の表情や声色には、妬みの色はないように見えた。
　もちろんこの商売をしていれば感情は外に出さないようにするものだが、客相手ではないからそこまで隠す必要はない。
　無口なさゆるは自分から先輩に話しかけることはないから、声をかけてくれる沙央莉とは割と親しいほうだと言える。

「さゆみさん、５番テーブルご指名です」
　声がかかり、さゆるは沙央莉に黙礼して立ち上がった。
「いってきます」
「せいぜい頑張ってね」　
　沙央莉が軽く手を上げて答えた。
　

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