オトナもコドモも、ダレデモ学校｜リアクション

オトナもコドモも、ダレデモ学校

　何だか猫が多い教室です。
「ちょっと、もう。ノートが取れませんわ！」
　長い耳のほしびとさんがどけてやると、猫は不機嫌そうにごろにゃんと鳴き、またノートの上にやってきてのっしとお尻を乗せました。
　今は、さんすうの時間です。
「それじゃあ次は、晴月さん。この問題が解けますか？　考えてみましょう」
「うんっ、ええと、ええと……」
　指折り数えて計算に挑む晴月。お勉強はあまり得意ではないみたい。
　ゆっくり計算する晴月を、でも先生は急かしたりはしません。
「晴月、大丈夫か？　ここはほら、こうすれば……」
「うーん？」
「こうして、こうだろ？　これなら分かる？」
「あっ。分かった！」
「はい、良く出来ました」
　ラッセルが助け舟を出しても、先生はこら！　なんて怒ったりはしません。生徒たちのコミュニケーションだって、大事な勉強だから。
　鴉天狗君には熊吉先生がヒントを出してくれたし、長耳のエルフィンさんの机を動かない猫はののこがひょいと膝に乗せ、ごろごろごろ。おかげで彼女はノートを取ることができました。
「いや、野々さんもノートを取らないと……」
「ほーらほら、気持ちいい？　ここが気持ちいいの？　それともこっちかにゃー？　にゃははー、かわいいねえ英二くん♪」
　ののこの分は、英二があとでノートを見せてあげることにします。
「うわぁ、すごいね！　そんなにさらさら解いちゃうなんて」
　と瑠奈が感心したのは、莉鳥です。
「いや、まぁ、小学校の算数だし……もともと数学とか理科は得意なの」
「そうなんだー。でも、あたしはそんなに速く解けないなぁ。あたしがのんびりしすぎだからかな？」
　瑠奈も難しくて分からないなんてことはないけど、莉鳥は得意分野だと言うだけあって、すごいスピードで答えを書いていきました。
「まぁ、確かに。私が小学生だった時のさんすうより、ちょっと難易度は上がってるかも。子供の頃にこんな問題出されたら、答えられるかな……」
「今の子供って、頭がいいんだねぇ」
　優等生っぽくメガネをかけてみたけど、あまり優等生っぽいことはできません。瑠奈はぺろりと舌を出して笑います。莉鳥もつられて、くすりと微笑みました。
「おっ」
　ラッセルと晴月の机にも猫がやってきて、かまって！　遊んで！　と言わんばかりに二人のほっぺたをぷにぷにします。
「ははは、かわいいなーこいつ」
「ねぇ、遊んであげようよ、ラッセル！」
「授業中だから後でな、晴月。今は、ほら。これで我慢してくれよ」
　ポケットから取り出したにぼしを晴月に手渡すと、晴月は嬉しそうにそれを猫へ差し出しました。ぱくり、はぐはぐとにぼしを食べてご満悦な猫を横目に、二人は再び先生の言葉に聞き入ります。
「はい、皆さん良く出来ました。すぐには覚えられなくても大丈夫ですよ。これから少しずつ、覚えていきましょうね」
　はーい！　と生徒のみんなは元気よくお返事をして、先生も嬉しそうに、わふん。

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