太陽の島にて｜リアクション

太陽の島にて

　目の前に停まった車のドアを開けた稲積柚春は、ウォルター・Bの笑顔に迎えられて、助手席へ乗り込んだ。
「お待たせ」
　ハンドルを握りなおすウォルター、柚春も嬉しそうに頷く。
「よろしく！」
今日はドライブデートだ。二人だけの空間にドキドキする。
「仕事は大丈夫なの？」
　年度末なので、教師は大変なのだろう。このところは柚春自身もバタバタしていて久々のデートだ。
「ようやく落ち着いてきたところでねぇ。そっちはどうかな？」
「ひっこしするわけじゃないから、それなりに準備は順調だよ。それより今日が楽しみで」
　柚春はふとした瞬間に出た欠伸をかみ殺した。
「ちょっと寝不足なんだ」
「寝られなかったてこと？」
「うん、まあ」
　デートのことだけではない。柚春はもうすぐ18歳の誕生日を迎える。卒業も目前、彼との約束が気になって仕方ない。
（卒業したら…ちゃんと恋人にしてくれるって）
　柚春はウォルターとのペアリングを撫でる。
（待ってと言わせないんだから。卒業したら。大丈夫だよね？　ワット）
「もしかして、夜遅くまで何かしてたのかなぁ？」
「！　あ、いや。もうすぐ僕の」
「誕生日だねぇ」
「あ」
　即答されたことに驚き半分、嬉しさ半分。
「お祝いにどこか……どこが良いかなぁ、って考えてるんだ。柚春は？」
「僕は……えーと」
　ここで意見を言っていいものか。ウォルターにお任せで知らないところに連れて行ってもらうというのも楽しいだろう。
「今まで泊まりで出かけた島根の出雲大社、群馬のロックハート城へ行くのも素敵だし、ニャンドに行くのもいいかも」
「ニャンドかぁ」
　ウォルターは少しだけ目をキラキラさせていた。ニャンドに反応するとは。
「次の日、早めに中へ入れるしね」
「ん、あ、泊り……」
　はっとした様子で言うので、柚春は上目遣い。
「また泣かないとダメ？」
「そ、そうじゃなくて、……参ったな」
　苦笑を浮かべたウォルターは小さく深呼吸をした。
「閉園前に花火が上がって、ライトアップやプロジェクトマッピングがあってさ、それを一緒に、最後に見たらその日がずっと思い出になると思ってたんだ」
　二人で並んでみる幻想的なファンタジーの世界は確かに思い出に残るだろう。素敵だ。
「ずっと忘れられないプレゼントを考えとくよ」
　にっこりと笑顔を向けられ、柚春は顔を赤くした。
「う、うん。楽しみにしてるね」
　色々と考えてくれている。もしサプライズでも、ウォルターと一緒ならと柚春は暖かい気持ちになった。

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