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anything
未婚化・晩婚化というものが叫ばれる昨今である。若者たちの曰く「まだ早い気がする」、「仕事や学業に打ち込みたい」、「自由や気楽さが失われる気がするから」「必要性を感じない」「適当な相手と巡り合う機会が無い」などなど。要因はいろいろあれどともかく、現代の若者たちは結婚や出産にとかく後ろ向きなのだそうだ。そうした主義主張や信条は現代の価値観に照らし合わせて尊重されるべきである一方、社会的には少子化の主要因ともなろうし、また晩婚化に伴い避けては通れない高齢出産の問題にも合わせて言及されることが多い。結婚を各々適齢と考える年齢で行う選択の自由は尊ばれるべきでありながら、相応のリスクについても検討した上で己のスタイルを熟慮・決定すべきだろう。うんぬんかんぬん。
「はー。なるほどねぇ」
といった情報番組に見入る稲積 柚春にとって、そうした社会の抱える課題や風潮は全くもって他人事ではない。夫、ウォルター・Bとは二十の年の差がある。今のところ彼は至って元気だし出会った頃と変わらず時に少年の心を忘れず、時に凛々しく柚春を守ってくれる、実に頼りがいのあるダンナ様なのだが、その身体には着実に衰えがやってくる。若い柚春にとって老いや衰えはまだ遠い未来のことだが、夫にとっては差し迫ったことと言えなくもないのだ。
「最近少し、腰が痛いとか肩が痛いとか言ってたし」
出産についてもちろん意識しないわけではない。彼と共に過ごす日々は穏やかで幸福に満ちている、しかし彼との子を願う思いを抱くことは当然。必然だ。
「子供が欲しい、って言ったら……ワットに負担かけちゃうかな」
気後れしてしまうところもあるが、そこで先の情報番組である。ゆっくり愛を育んで、天からの授かりものを気楽に気長に待つのも幸せなことだろうが、ひょっとしたら彼の年齢が故に……ということもあるではないか。遅すぎるということは無いのではないだろうか。いやむしろ今からでも積極的に推し進めてゆくべきでは無かろうか？
そんな決意が胸に満ち、柚春はぐっと拳を握り込んだ。
「……うん。よしっ」
「何が『よし』なの？ どうかした？」
当の旦那はぽかんとして新婚の妻を見つめた。
これは柚春がそんなとぼけた夫をあの手この手でその気にさせ二人の愛の結晶を授からんとする、奮闘の記録である。
CASE.1。
「ワット！ 今日のお料理は特別なんだよ」
「へぇ、そりゃ楽しみだ。どれどれ」
カキフライ。あさりの酒蒸し。鰻重。山芋とろろご飯。すっぽん汁。亜鉛にセレン、マンガン等が多く含まれる食材をふんだんに使用した、いわゆる精が付く料理の数々が卓の全面を埋めていた。フルコースである。
「何だか……元気になりそうなメニューばかりだねぇ」
「そうだよ、ワットにはいつまでも若々しく元気でいてもらいたいから。それに……ね？」
彼の胸元をつつつと指先でなぞると、彼は小さく肩を震わせた。
「明日は二人ともお休みだし、夜はゆっくりと……」
「うーん、美味い！ これも絶品だし、こっちもイケるねぇ。奥さんが料理上手で嬉しいよぉ、僕は」
「……あ、うん。喜んでもらえて良かった」
CASE.2。準備は万全だ。
「ただいまーっと、ふー今日も疲れたぁ……あれ？ 何だか、部屋の香りがいつもと違うような」
「おかえりなさいワット！ ふふふ、分かる？ いい香りでしょ」
鼻をひくつかせ、リビングに満たされた香りをしきりにかぐ様は何だか小動物めいて可愛らしい。柚春は小さく笑む。
「何だか落ち着く香りだねぇ。まるで南国のリゾート地を訪れたかのような、異国情緒あふれる香り……」
「うんうん。そうでしょ？」
「それに奥行きがあって、どこか官能的な……」
「今日はね、ふふふ、ムスクとイランイランをブレンドしてみたんだよ。イランイランには性的欲求を高める作用があって……あれ？」
「…………ぐぅ」
お疲れの彼は、奮い立つ前に寝入ってしまった。
CASE.3。
「ふふふ、ちょっとお高い下着買っちゃった。これでワットをその気にさせて」
「……柚春様。夫婦の営みに私が口を挟むものではありませんが、僭越ながら、あまりはしたないのはいかがなものかと」
「うわーーーっ、メアリさん！？」
まぁ何だ。上手くいかないこともあるが、結果、柚春の積極的攻勢が実を結んだのかどうかは今の二人を見れば一目瞭然だ。
柚春が自ら引き寄せた幸福はこれからも、ずっと続いてゆくだろう。
「とっても幸せ。でも、まだまだ満足したわけじゃないよ？ これからも手加減しないから、覚悟してね。旦那様」
「ははは。お手柔らかに頼むよぉ」
仲睦まじい二人の未来はどうやら、安泰のようである。
「はー。なるほどねぇ」
といった情報番組に見入る稲積 柚春にとって、そうした社会の抱える課題や風潮は全くもって他人事ではない。夫、ウォルター・Bとは二十の年の差がある。今のところ彼は至って元気だし出会った頃と変わらず時に少年の心を忘れず、時に凛々しく柚春を守ってくれる、実に頼りがいのあるダンナ様なのだが、その身体には着実に衰えがやってくる。若い柚春にとって老いや衰えはまだ遠い未来のことだが、夫にとっては差し迫ったことと言えなくもないのだ。
「最近少し、腰が痛いとか肩が痛いとか言ってたし」
出産についてもちろん意識しないわけではない。彼と共に過ごす日々は穏やかで幸福に満ちている、しかし彼との子を願う思いを抱くことは当然。必然だ。
「子供が欲しい、って言ったら……ワットに負担かけちゃうかな」
気後れしてしまうところもあるが、そこで先の情報番組である。ゆっくり愛を育んで、天からの授かりものを気楽に気長に待つのも幸せなことだろうが、ひょっとしたら彼の年齢が故に……ということもあるではないか。遅すぎるということは無いのではないだろうか。いやむしろ今からでも積極的に推し進めてゆくべきでは無かろうか？
そんな決意が胸に満ち、柚春はぐっと拳を握り込んだ。
「……うん。よしっ」
「何が『よし』なの？ どうかした？」
当の旦那はぽかんとして新婚の妻を見つめた。
これは柚春がそんなとぼけた夫をあの手この手でその気にさせ二人の愛の結晶を授からんとする、奮闘の記録である。
CASE.1。
「ワット！ 今日のお料理は特別なんだよ」
「へぇ、そりゃ楽しみだ。どれどれ」
カキフライ。あさりの酒蒸し。鰻重。山芋とろろご飯。すっぽん汁。亜鉛にセレン、マンガン等が多く含まれる食材をふんだんに使用した、いわゆる精が付く料理の数々が卓の全面を埋めていた。フルコースである。
「何だか……元気になりそうなメニューばかりだねぇ」
「そうだよ、ワットにはいつまでも若々しく元気でいてもらいたいから。それに……ね？」
彼の胸元をつつつと指先でなぞると、彼は小さく肩を震わせた。
「明日は二人ともお休みだし、夜はゆっくりと……」
「うーん、美味い！ これも絶品だし、こっちもイケるねぇ。奥さんが料理上手で嬉しいよぉ、僕は」
「……あ、うん。喜んでもらえて良かった」
CASE.2。準備は万全だ。
「ただいまーっと、ふー今日も疲れたぁ……あれ？ 何だか、部屋の香りがいつもと違うような」
「おかえりなさいワット！ ふふふ、分かる？ いい香りでしょ」
鼻をひくつかせ、リビングに満たされた香りをしきりにかぐ様は何だか小動物めいて可愛らしい。柚春は小さく笑む。
「何だか落ち着く香りだねぇ。まるで南国のリゾート地を訪れたかのような、異国情緒あふれる香り……」
「うんうん。そうでしょ？」
「それに奥行きがあって、どこか官能的な……」
「今日はね、ふふふ、ムスクとイランイランをブレンドしてみたんだよ。イランイランには性的欲求を高める作用があって……あれ？」
「…………ぐぅ」
お疲れの彼は、奮い立つ前に寝入ってしまった。
CASE.3。
「ふふふ、ちょっとお高い下着買っちゃった。これでワットをその気にさせて」
「……柚春様。夫婦の営みに私が口を挟むものではありませんが、僭越ながら、あまりはしたないのはいかがなものかと」
「うわーーーっ、メアリさん！？」
まぁ何だ。上手くいかないこともあるが、結果、柚春の積極的攻勢が実を結んだのかどうかは今の二人を見れば一目瞭然だ。
柚春が自ら引き寄せた幸福はこれからも、ずっと続いてゆくだろう。
「とっても幸せ。でも、まだまだ満足したわけじゃないよ？ これからも手加減しないから、覚悟してね。旦那様」
「ははは。お手柔らかに頼むよぉ」
仲睦まじい二人の未来はどうやら、安泰のようである。
あとがき
担当マスター：
網 透介
ファンレターはマスターページから！
網です。
フリーなお話でした。
特にテーマを定めないシナリオというのもいいものですね。書きやすかったです。
皆さんはいかがだったでしょうか。アクション書きやすかったですか？ それとも迷ってしまうものでしょうか。
好評でしたら、またそのうちやってみたいと思います。
それでは、また次回に。
網でした。
フリーなお話でした。
特にテーマを定めないシナリオというのもいいものですね。書きやすかったです。
皆さんはいかがだったでしょうか。アクション書きやすかったですか？ それとも迷ってしまうものでしょうか。
好評でしたら、またそのうちやってみたいと思います。
それでは、また次回に。
網でした。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2025年04月03日
- 参加申し込みの期限
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- 2025年04月10日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2025年04月10日 11時00分
