ねこねこプリズンへようこそ！｜リアクション

ねこねこプリズンへようこそ！

　なかよく収監されたくて

「ど、どうかな？」
　猫耳と尻尾がついたミニスカメイド服に身を包んだ稲積柚春は、短すぎるスカートを気にしてお尻のあたりを抑えながら、同じように猫耳と尻尾が付いた執事服のウォルターを見上げていた。
「似合ってるよぉ。でも、君まで罪を自白して収監されなくてもよかったのに。しかも……冤罪でしょ？」
　ウォルターはそう言って、心配そうに柚春を見遣る。
「だけどもとはと言えばワットが僕のためにしてくれたことだし……それにワットだけなんて嫌だもん」
　それは柚春が風邪をひいて寝ていたときのこと。布団の上に猫が乗った夢を見ていたら、本当にどこからか入り込んだ猫が布団の上にでーんと乗っていて重さでうなされていたらしく、気づいたウォルターが猫をどかしてくれたそうだ。そのやさしい気遣いが、猫にとっては『そこがいいのにどかした罪』にあたったらしく、ウォルターは猫罪に問われてしまった。
　引っ立てられていくウォルターを前に、柚春はつい叫んだ。
　――な、なら僕は刑罰から逃げようとしました！　なんだったらかわいさに目がくらんで盗撮も！　と。

「どっちも本当にはやってないから冤罪だけど……猫たちは信じてねこねこプリズンに連れて来てくれたし。どうせなら一緒に仲良く服役しよう？」
　そうして柚春に与えられた刑罰は、猫コスプレをしてねこねこ看守の部屋の掃除をすることだった。
　看守の部屋はこじんまりとした個室だった。じゃれたあとか服などがガチャガチャ散らかっていてカーテンもすっかりボロボロだ。ねこねこ看守はねこじゃらしで柚春の猫耳をぴしぴしして命じる。
「しっかり片付けるにゃ！」
「わかったよ……」
「ニャーッ！　語尾も猫っぽく！　『にゃ』か『にゃん』にゃっ！」
「わかりましたにゃ……ご、ご奉仕するにゃん」
　気恥ずかしくて小声で言うと、背後でウォルターが含むように笑うのが分かった。
　ちなみにウォルターは同じ部屋の修繕作業を命じられている。
「～～もう！　スカートは短すぎるし、語尾もにゃんだなんて、恥ずかしいんだよ？　ワットも語尾は『にゃ』か『にゃん』だからね！」
「わかったにゃん、可愛い奥さん。さっさと片付けよう～にゃん」

　柚春はウォルターが作業しやすいようにサポートもしつつ、まず散らかった服を片付けた。それからウォルターと一緒にカーテンレールのぐらつきを直し、破きがいのあるレースのカーテンをつける。
「うーん、これはなかなか……」
「え、なに？」
　椅子の上に乗ってつま先立ちでカーテンを付けていた柚春は、椅子がぐらつかないよう抑えているウォルターが見上げているのに気づき、はっとしてお尻を隠した。
「ちょ、何見てる……にゃん！？」
「見てない、なぁんにも見てないにゃあ」
　油断も隙もない。
　まあ……本当はいいんだけど。
「やっぱりこっちはワットがやって。僕は猫草の調子を見て、餌や水の容器も洗って補充するから……」
　柚春が真っ赤になって椅子から降りようとすると、椅子がぐらついて体勢が崩れた。
「おっと」
　ウォルターはとっさに柚春の身体を支え、そのまま抱きしめるようにして椅子からおろしてくれる。
「お気を付けてにゃあ、猫メイドさん」
　その手があまりにやさしくて。柚春はまたこの人が好きになってしまうのだった。

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