ファスニャハト・パレード｜リアクション

ファスニャハト・パレード

◆友達と過ごすファスニャハト

　朝永真深は友達の手島ゆかりと一緒にファスニャハト・パレードへ参加することにした。

（ドイツには行ったことがあるけど、こんなお祭りがあったんだ）

　地域によって差があるのか、あるいは時期的に外れていたのか。それはまた現地に行ったときに確かめるとして、今は目の前のイベントを満喫したい。寝子島町役場前へ行くと、そこではスタッフがマスクを配っていた。色々あるなかで真深は猫、ゆかりは魔女を選んだ。

「あたしの猫、どう？　かわいい？」
「うん、かわいい！」
「どれもかわいくて迷っちゃうわ」
「わかる」

　いざマスクをかぶってパレードの列に待機する。これから街を練り歩くと思うと、なんとも言えないドキドキがあった。パレードが始まり、真深たちは観客に向かって手を振った。観客側からも手を振り返してもらうと嬉しかった。緊張もあって最初はそれくらいしかできなかったが、だんだん物足りなくなってくる。
　そこで途中から、もらった紙吹雪をばらまいたり、配られたお菓子を食べたり、他にもなんとなく歌いたい気分だったので歌ってみた。多少遠慮しながらやっていたが、他の参加者も大概自由だったのでそこまで気にする必要は無さそうだ。買い食いしているのを見かけて、思わず立ち寄ったのも楽しかった。
　だんだん盛り上がってきてゆかりとじゃれ合っているうちに、まるで本物の猫と魔女がじゃれ合っているみたいになってきた。こういうのは無性に楽しくてつい調子に乗ってしまう。パレードの雰囲気を壊さない範囲で大いに楽しんだ。
　パレードは町役場から星ヶ丘まで行き、そこから町役場まで戻る予定だった。結構な距離があるはずだが、気が付けば町役場前に戻っていた。

「早っ！」

　だいぶ歩いたはずだが、あっという間に終わったように感じた。『冬将軍』に火をくべて燃やすとパレードは完結し、そのまま町役場の前で立食パーティが開かれた。これだけ歩けば真深もお腹が空いてくる。ゆかりも同じく空腹らしいので２人でパーティに参加する。今ならいくらでも食べられそうだと思ったし、本当にたくさん食べた。

「とても楽しかったな」
「だね」
「ゆかり、来年も一緒にいこう」

　ゆかりは真深の誘いに頷いた。

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