サンマチームＶＳマンボウチーム　雪合戦｜リアクション

サンマチームＶＳマンボウチーム　雪合戦

　終わってみれば勝ちも負けも関係なく、ただ仲間がそこには在るだけだ。
「みんな～、お疲れ様ぁ～。楽しかったねぇ～」
「疲れたろぉ。飴があるから、食っていいんだぜぇ～」
　冬場の運動には糖分補給だ。飴は喉の乾燥対策にもいい。
「ほい、お嬢ちゃんにも飴ちゃんだぜぇ～」
「ありがとう、サンマさん！　マンボウくん！」
　ころころと飴を舐めてご満悦な楓の頬は上気している。身体を冷やすと体調を崩してしまうかもしれない。智依子は娘の纏うもこもことしたウェアの胸元をしっかりと閉めてやった。
「楓、楽しかった？」
「うん、ゆきがっせん、楽しかった！」
「良かったね。じゃあ、そろそろ帰ろうか」
　ばいばい、と手を振り帰ってゆく楓の緩んだ顔は子供も大人も和ませた。智依子もこの一時を楽しんだ。そして今日の楓はずっと、一日中この雪合戦の話をしているだろう。
　火照りが収まってくると少し寒さが際立ってきて、身を震わせた柚春の肩をウォルターが抱く。
「ワット。ワットの雪玉投げはやっぱり、かっこよかったよ。僕をかばってくれた時も」
「そうかい？」
「うん、すごくね。また惚れ直しちゃった」
　半ば衝動的に爪先立ち、彼の頬に唇を寄せる。ウォルターはお返しに柚春の髪へ鼻先を埋めて唇を押しつけた。
「うわぁ……オトナだぁ」
　千恵は頬を赤く染め、自然と想い人の顔が瞼の裏へと浮かび上がる。
「どうしたの、千恵ちゃん？　寒いの？」
「な、何でもないよ！　お疲れ様っ、かんなちゃん！」
「うん。おつかれ」
　クールなかんなは首を傾げ、千恵はますます熱くなる頬に両手を当てた。いつかは自分も、なんて思うが今はまだ具体的なイメージを想起するより恥ずかしさが勝った。
　飴を受け取った瀬莉は、アリサの手もとをじっと見つめた。
「お姉さんのそれ、何味？　私ハッカ……」
「これはイチゴね。ハッカいいじゃない、良かったら交換してくれない？」
「ほんと？　やった」
　と喜んだ瀬莉だったが、はっとしてそれを表に出さぬよう抑えこんだ。
「うん？」
「むむぅ……」

　１４歳の瀬莉は周りの小学生たちに比べればよほどお姉さんで雪合戦など子供っぽいかとも思えたものだが、目の前のアリサはといえばこんなにもすらりとしてスタイル抜群で、自分のような年下を気遣う余裕っぷり。これが大人のオンナというやつだろうかと瀬莉はうなる。
　そんな幼さ残す少女に、アリサはふわりと微笑み告げた。
「そんなに焦らなくても大丈夫よ。将来、必ず素敵なお姉さんになれるから」
「な、何のこと？　私別に、そんなこと気にしてないし。羨ましいなんて思ってないし！」
「あはは、そう？　ごめんごめん。ほら、イチゴ味」
　お姉さんの綺麗な指でイチゴの飴玉をころんと口の中へ放られて、瀬莉は頬を膨らませたが、すぐにその甘さに相好を崩した。

「気をつけて帰るんだぜぇ～」
「わわわ、足もとがすべって……きゅうっ」
「ってな感じで、転ばないようになぁ」
　サンマさんとマンボウくんに見送られ、彼らは帰路へつく。降り積もった雪を思い思いに、めいっぱいに楽しんだ。冷たい空気に熱い勝負、澄み切った冬空。いつか振り返り、再び思い出しては暖かく灯る思い出を胸に抱くだろう。

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