ハロウィン☆デイズ・オーバータイム！｜リアクション

ハロウィン☆デイズ・オーバータイム！

　寝子高を卒業し成人を迎えた稲積柚春は、ウォルター・Bとお揃いのスニーカーで歩いていました。
「大丈夫かい？　無理しないでよぉ？」
　心配そうな傍らのウォルターに、柚春は笑顔を向けます。
「大丈夫。無理はしないよ。二人の時間を満喫したいな」
　気分も体調も上々、問題ありません。
　教師と生徒の関係はもう終わり。
　周囲の人の目を気にすることもなく、柚春はウォルターと仲良く手をつないでいました。
　昨日も気分転換にハロウィンパレードに出かけたのでした。
「パレードも見ているだけで楽しかったけど、今日の料理コンテストも楽しみだったんだ」
「まあ、せっかく準備したしねぇ」
「この日のために、ワットも一生懸命練習したもんね」

　ハロウィンコンテストの会場の駅ビルにつくと、二人はお揃いのエプロンと三角巾をつけました。
「それじゃ、始めよう」　
　ウォルターはパプリカを手に、包丁で目や口を切り抜いていきます。
「おっと、失敗」
「大丈夫、材料は十分持ってきてるからね」
　柚春は温かいごはんに五目ちらしの素を混ぜ、薄焼き卵を作り始めました。
　ウォルターはにんじんやきゅうりをスティック状に切り、半分にしたアスパラをレンジにかけます。
「これはちょっと失敗かなぁ？」
「任せて」
　ウォルターが切り損ねたにんじんとパプリカを柚春が回収。
　細かく切って水にコンソメと共に投入、煮始めます。
　そしてすし飯をラップでくるみながら山になるように握り、すし飯の上から薄焼き卵をふんわりかけました。
　端をつまみだし、形を整えます。　
「あとは目と口だねぇ」
　ウォルターが取り出した海苔パンチで、柚春が可愛い目と口を作りました。
「ワット、マヨネーズお願い」
「これだね」
　卵焼きの上につけたマヨネーズを接着剤代わりに海苔を張り付け。
「仕上げにほっぺにケチャップを付けたら完成！」
「こっちもスティックを入れるよぉ」

　綺麗に盛り付けて完成した料理を、柚春が審査員に説明しました。　
「パプリカに野菜スティックを詰めた『ジャックオランタンのスティックサラダ』。五目チラシを薄焼き卵に包んで可愛いお化けにした『おばけのオムライス』。それから、くり抜くのに失敗したパプリカや、上手く切れなかった野菜達を活用した『コンソメスープ』です。大人だけじゃなく、子供と楽しめるメニューを目指しました。
幅広い年齢層に受け入れられると嬉しいです」
　審査員たちは感心した様子で頷きました。
「このお化け、食べちゃうのがもったいないわね……でも、美味しいわ」
　味付けにも満足してもらえたようです。

「それでは審査の結果を発表します」　
　みんなの料理の審査が終わり、ついに結果発表の時間となりました。
「最優秀賞は、稲積柚春さんとウォルター・Bさんです！　食材を無駄にせず、子供も楽しめる可愛いデザインが評価されました」
　顔を見合わせた柚春とウォルターは、満面の笑みで手を取り合いました。
「賞品は、５万円分の旅行券です」
「ありがとうございます！」

　審査が終わって、二人は喫茶店で一休みしました。
「ワットも随分包丁が使えるようになったね！　まだ味付けとかを任せるのは不安な部分はあるけど……お手伝いもしてくれるようになったから嬉しいな」
「柚春だけに任せてはおけないからね」
「……素敵なパパになりそうで、安心だよ」
（でもいつか子どもができたら、独り占めできる時間が終わっちゃうのはちょっと残念だな）
　そう柚春は思うのでした。

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