霊界幼稚園はてんてこまい｜リアクション

霊界幼稚園はてんてこまい

◆幼稚園児の自分

　月原想花が目を覚ますと、見慣れない光景が広がっていた。周囲を確認する内に、そこが霊界の幼稚園だと分かった。そして自分自身が幼稚園児になっていることにも気づく。

（妙に視線が低いとは思っていたけど、まさか幼稚園児になっているとは……。一人称とベリーショートにした髪型で男の子に間違えられそうだけど、一応は女の子……だけど、まあどうでもいいか）

　あまりに突飛な状況に彼女は深く考えるのをやめた。他にも幼稚園児が遊んでいるのが見える。じっと立ち止まって眺めていたらポン太と名乗る子が近づいてきた。

「な、なにか？」

　次の瞬間、ポン太くんが想花の姿に化けた。驚く暇もなく、化けたポン太くんが走り出しいたずらを始めた。

「まって！」

　制止する想花の声を一切聞かず、ポン太くんのいたずらは止まらない。姿は想花そのものなので、やってもいないいたずらを理由に怒られる羽目になった。

（なんでこんな目に……）

　怒った想花はポン太くんを追いかけていると、危うく誰かにぶつかりそうになった。

（あぶない！）

　なんとか方向を変えて直撃は避けたが、驚かせてしまったようだ。他の子がリンちゃんと名前を呼びつつ、なぜか距離を置いている。想花はすぐさま駆け寄った。

「ごめん！」

　リンちゃんは涙目だった。どうにかなだめようとしたら、その子からいきなり電撃が放たれた。想花はそのショックに耐えられず気絶してしまった。

（ん……）

　ふたたび意識が戻り、ゆっくりと目を開く。そして先ほど電撃が原因で倒れたことを思い出す。

（な、なんか苦しい……）

　今度は何事かと目を見開く。真横には昼寝をしている幼稚園児。名札にはのん子と書かれている。そしてその子の首が伸び続けて、想花の首を絞めつける一歩手前だった。苦しさの原因を発見した彼女は、どうにかして拘束から逃げ出した。

（何か全然落ち着かない。幼稚園児ってこんなに騒がしかったっけ？）

　ここが霊界の幼稚園だからなのか、それとも幼稚園児は元々こういうものだったか。いまの想花には判断できなかった。そんな彼女のもとにミーくんという猫又の子がやってきて、一緒に遊ぼうと誘ってきた。しかし想花は疲れ果てていたので、もう少し昼寝させてほしいと力なく返した。
　しかしミーくんはそんなことお構いなしな上に、その辺りを引っ搔き回して爪痕だらけにしてしまう。

「やめようよ」

　流石に良くないと思って止めに入るが、ミーくんの快活っぷりに翻弄されるだけだった。その後も他の子たちに巻き込まれ、大変な一日となった。

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