霊界幼稚園はてんてこまい｜リアクション

霊界幼稚園はてんてこまい

◆個性的な子供たち

　桜井ラッセルと風の精晴月はいつのまにか、霊界の幼稚園に迷い込んでいた。寝子島とは違う雰囲気に最初は戸惑ったものの、恐怖は無かった。

「ホラー嫌いだったけど、俺も慣れたもんだ」
「ほんとに？」
「もうビビりな俺じゃねーぞ」

　グロはまだ心臓に悪いけど、ビックリ系ならなんとかなる。そんな話をしているとこの幼稚園の先生らしき人物に話しかけられる。場所を考えると、この人もあやかしの仲間だろう。しかし悪意は感じられず、純粋に困っているようだった。

（あやかしの子供だし、へっちゃらだろ）

　晴月に目配せすると、彼女は小さく頷いた。園内ではあやかしの園児たちが元気に駆け回っていたり、本を読んで過ごしている。リンちゃん、ミーくん、ポン太くん、のん子ちゃんなど名札を参考に覚えていく。もっとも、皆個性的なので間違えることはないだろう。

（リンちゃんみてると晴月みてーだなぁ）

　リンちゃんは雷様の子どもで、臆病な性格。属性も性格も晴月とは違うのだが、彼には思うところがあった。

（性格としては昔の引きこもりだった俺のことを思い出すから……声かけたくなるんだよな。無理はさせねーけど、興味ありそうなことみつけたら話しかけるか）

　それに男の自分よりも、女の子同士のほうが気が合うかもしれない。そうやって全体の様子を観察しながら、幼稚園の皆と一緒に遊んでいきたいと考えていた。しかし、あやかしも人間の子と変わらないと思いつつ、その個性の強さは圧倒的だった。
　それでもスポンジブロックで大きな家を作って過ごしたり、電車を作ってごっこ遊びに真剣になる。輪に入るタイミングを計っている子を見かけたら、晴月と一緒にボールやかくれんぼに誘って仲良くできないか試した。
　他にも絵を描いたり葉っぱで勲章を作ったりと工夫を凝らすうちに、だんだん打ち解けた気がした。ふと、ポン太くんが晴月に化けてこっそりラッセルに近づく。

「ねえねえラッセル」
「ん？　どうした？」
「なんでもないよ」

　目の前の晴月は楽しそうに笑っている。初めは気づかなかったが、よく観察すると本人ではない。

（さっき遊んでいる子たちに、化け狸の子がいたな。名前はたしかポン太くん）

　勝手に化けるのは良くないと伝えるべきか。そもそも晴月本人はポン太くんが化けてることを知っているのか。

（いや、知ってたら流石に何か言うだろう）

　そんなことを考えていたら、まさに化けたポン太くんと晴月本人が鉢合わせた。

「え？　私？　え？」

　戸惑う晴月。そしてラッセルに駆け寄ってポン太くんを指差す。

「私がもう１人いる！」

　ポン太くんは晴月の様子が面白かったのか、同じポーズをとって台詞を反復する。どちらが本物か分かっているラッセルはW晴月が見られて満足そうだ。
　そうして園児のお世話というよりも、みんなと一緒に遊ぶ１日が過ぎていった。

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